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[I-SY3-1]カテーテルアブレーションにおける合併症対策の観点からみた幼少患者に対する標準治療

吉田 葉子 (大阪市立総合医療センター 小児循環器・不整脈内科)
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キーワード:

不整脈、カテーテルアブレーション、合併症

カテーテルアブレーション(CA)は、小児における頻脈性不整脈の根治的治療として確立されつつある。一方で幼少患者(おおむね体重15kg未満)は、血管径や心腔の小ささに加え、先天性心疾患患者(CHD)では解剖学的複雑さが重なる。 われわれは、当科で2006-2018年に行ったCA治療1021件について報告した(Heart Rhythm 2019)。体重15kg未満の90人(CHD45.6%)はそれ以上の体格の患者と比較し、成功率は有意に低く、再発率は有意に高かった。 また一般には低体重患者では合併症発生リスクが高くなることが報告されている。2006年以降に当科で経験した体重15kg未満CA症例の重大と判断した合併症について提示する。症例1は3歳13.8kg、薬剤抵抗性左側副伝導路のWPW症候群。高周波アブレーション治療翌日に心嚢液貯留と壁運動低下と僧帽弁逆流を認めた。β遮断薬とACE阻害薬により保存的に治療開始、これらの所見は改善したが、1年後の造影検査で冠動脈狭窄を認めた。症例2は1歳8.9kg、多発性心室中隔欠損のGlenn術後、中隔副伝導路のWPW症候群。Fontan術前にクライオアブレーションを行ったが、治療30分後に完全房室ブロックとなり、その後ペースメーカー植込みを要した。症例3は9か月9.0kg、ハイリスク複数副伝導路WPW症候群。心房中隔穿刺時ワイヤーが心嚢内へ侵入し造影剤貯留を認めたが、保存的治療で改善した。症例4は4歳13.5kg、両大血管右室起始心内修復術後の心房頻拍。右内頚静脈穿刺による右血胸にドレナージを要した。これらについて予防的対策を具体的に解説する。 幼少患者のCA適応については、症状や薬剤抵抗性など踏まえ慎重に個別判断する必要があり、安全確保のためには、術前評価の徹底、適正サイズのカテーテル選定、クライオアブレーションの使用、経験豊富な施設での施術が必要であると考えられる。