講演情報

[I-SY3-3]ペースメーカーの標準治療ー長期予後から見た先天性完全房室ブロックに対する適応

後藤 浩子1,3, 桑原 直樹2, 加藤 千雄3 (1.名古屋徳洲会総合病院 小児循環器内科, 2.岐阜県総合医療センター 小児循環器内科, 3.名古屋徳洲会総合病院 循環器内科)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

ペースメーカー、先天性完全房室ブロック、適応

小児期にペースメーカーの植込みの代表疾患は先天性完全房室ブロック(congenital complete atrioventricular block;CCAVB)である。CCAVBの原因は「心原性」と「免疫性」とが大半を占める。「心原性」は修正大血管転位、房室中隔欠損、多脾症などの先天性心疾患に合併し、胎児期や出生時に発症することが多い。「免疫性」はシェーグレン症候群や全身性ループスエリテマトーデス患者に検出される自己抗体である抗SS-A抗体陽性妊娠の2-5%、再現性12~25%で胎児に先天性完全房室ブロックが生じるとされる。CCAVB児のペースメーカー植込み率は1歳時67%、20歳時90%と高率である。また、CCAVB児の死亡率は、1歳時20%、20歳時45%であり、予後不良である。
本邦の不整脈非薬物治療ガイドラインにおける、「小児および先天性心疾患患者のペースメーカー植込みの適応」によれば、class1のペースメーカー植込み対象 となるのは症候性あるいは心機能低下例、乳児の先天性完全房室ブロック(心拍数55回/分未満)、先天性心疾患を有する完全房室ブロック(心拍数70回/分未満)、幅広いQRSの補充収縮や心室期外収縮のほかQT延長を伴う完全房室ブロックである。EPSの必要はなく、適応は判断できる。むしろ重要なのは、ペースメーカーの植込み方法である。ペースメーカーの植込み方法によって予後が変わることが報告されるようになった。乳児では経静脈リードでは心内膜炎や静脈閉塞の合併症のリスクから心外膜リードが推奨される。また、非虚血性心筋症発症回避のためにペーシング部位は左室心尖部が第一選択であり,右室自由壁は可能なかぎり避けるべきであると考えられている。植込み後は、心外膜リードの断線や心機能・同期性、時に心絞扼や冠動脈圧迫などに留意して経過をみていく必要がある。この機に改めて、CCAVB児のペースメーカー植込み方法が長期予後に影響することを共有したい。