講演情報
[I-SY4-1]心臓初期発生研究の進歩と今後の再生医療への応用
○八代 健太 (京都府立医科大学 大学院医学研究科 生体機能形態科学)
キーワード:
心臓前駆細胞、心筋分化、心臓の初期発生
先天性心疾患は全出生の約1%に発生し、解剖学的形態異常の中で最も高頻度にみられる疾患である。近年、基礎生物学における解析技術の進展に伴い、胚発生過程における心血管系の形成メカニズムの理解が飛躍的に進んできた。しかし、得られた知見は未だ断片的であり、不明な点も多く残されている。先天性心疾患の分子病態を解明するためには、心血管系発生を制御する分子機構のさらなる理解が不可欠であり、また、その知見の再生医療への応用にも期待が寄せられている。これまでの研究により、哺乳類の心血管系は主に側板中胚葉と心臓神経堤に由来することが明らかになっている。初期胚において、側板中胚葉のうち最も頭側に位置する細胞群が心臓前駆細胞(CPCs)へと分化し、心筋および内皮・心内膜へと分化しながら原始心円筒を形成する。原始心円筒は右方向へ屈曲(ルーピング)し、流出路の平滑筋の起源となる心臓神経堤細胞の流入を受け入れながら、複数の細胞系譜が局所で相互に影響し合い、二心房二心室を持つ特有の解剖学的構造を形成する。近年、CPCsは胚体内での特徴的な挙動や分子特性に基づき、二つの主要なサブクラスに分類されるようになった。また、次世代シーケンサーを用いたシングルセル解析の導入により、従来にない解像度で心臓形成に関与する細胞の特性が明らかにされつつある。本講演では、哺乳類の心臓大血管の形態形成を概観し、心臓初期発生を制御する分子機構の最新知見と、それらの再生医療への応用可能性について議論する。