講演情報

[I-SY4-3]ヒトiPS細胞由来成熟心筋細胞・心筋組織の作製とその応用

三木 健嗣1, 長谷川 然2, 永島 利章2, 久呉 洋介2, 宮川 繁1,2 (1.大阪大学 ヒューマン・メタバース疾患研究拠点, 2.大阪大学 大学院医学系研究科 心臓血管外科)
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キーワード:

ヒトiPS細胞、Engineered Heart Tissue、拘束型心筋症

ヒトiPS細胞が誕生して18年が経過し、様々な疾患で臨床応用が開始されている。ヒトiPS細胞由来心筋細胞に関しては、分化誘導法および精製法の改良が進み、現在では高純度な分化心筋細胞を安定して得ることが可能となった。しかし、その成熟度は胎児レベルにとどまり、未熟な心筋細胞である点が大きな課題となっている。我々は、分化心筋細胞の成熟化の指標としてトロポニンIのアイソフォームスイッチに着目し、これを指標とした約9,000種の化合物スクリーニングにより、ヒトiPS細胞由来心筋細胞を新生児レベルにまで成熟させる化合物を見出した。その化合物を使用した結果、培養2週間でトロポニンI3を含む遺伝子発現の亢進、T管形成、サルコメア長の延長、代謝機能の向上、電気生理学的な成熟化が確認された。現在は、組織工学的手法を用いて、分化心筋細胞を活用したヒトiPS細胞由来心筋組織(Engineered Heart Tissue, EHT)を構築し、収縮動態を評価できるプラットフォームを確立した。本技術を活用することで、小児心筋症の病態解明および治療法の開発を進めている。本シンポジウムでは、分化心筋細胞の成熟化法に加え、現在取り組んでいる小児拘束型心筋症の病態モデル構築及び新規モダリティの探索について紹介し、これからの小児心筋症におけるヒトiPS細胞の利活用の可能性についても議論したい。