講演情報
[I-SY4-4]機能的単心室症患者に対する心臓内幹細胞を用いた治療法開発への取り組みの現状と展望について
○上田 秀明1, 戸田 光太郎2, 岡田 淳雅2, 小野 晋1, 金 成海3, 坂本 喜三郎4, 馬場 健児5, 笠原 真悟6 (1.神奈川県立こども医療センター 循環器内科, 2.株式会社メトセラ, 3.静岡県立こども病院 循環器科, 4.静岡県立こども病院 心臓血管外科, 5.岡山大学 小児科, 6.岡山大学 心臓血管外科)
キーワード:
幹細胞、再生医療、JRM-001
【背景】近年、幹細胞を用いた心疾患に対する再生医療等製品の開発が盛んに進められているが、その作用機序については未だ解明されていない。また安定製造に向けた技術的課題も多い。JRM-001は、自己由来の心臓内幹細胞を用いて製造する再生医療等製品(冠動脈内投与)で、機能的単心室症の患者を対象に2016年から多施設共同の企業治験を開始した。しかしながら、患者毎に細胞増殖能のばらつきがあること、製造に用いる自己血清に必要な採血量が多い等の課題から、実用化に向けた抜本的な解決が必要と判断し、症例登録を中断していた。【方法】製法見直しにより、製造工程に用いる自己血清を代替血清に変更し、培養成績を高める製造条件の検討を開発企業で実施した。製造堅牢性の確認のため、治験と同条件で複数医療機関から心組織提供を受けて試験製造を行い、培養成績及び製品特性を多面的に評価した。 また、得られた細胞が放出する液性因子の解析を中心に、他細胞との共培養による影響評価等を進め、機能的単心室症患者の予後改善に寄与する可能性のある機序の探索も行った。【結果】改良製法で製造を行った全30ロットで、培養成功と品質試験適合が確認され、治験の条件で安定的に増殖できることを確認した。異なる心組織提供施設からでも、一定の細胞増殖特性や品質特性を持ったJRM-001が製造された。その後、治験製品製造施設での改良製法による試験製造のデータをPMDAに提出し、治験再開に関する最終合意を得た。心臓内幹細胞の持つ特性として、強い抗炎症作用を持つ他、線維化の抑制、心筋増殖促進・心筋細胞保護につながる因子が多数放出されていることを確認した。【結論】細胞治療による機能的単心室症患者の心機能改善効果は、今後の治験で評価される。改良製法により培養成績が向上し、安定した製造ができることが示されたことにより、今後の治験における治験や症例登録の進捗が期待される。