講演情報

[I-SY4-5]位相差X線CT法を用いた奇形心Myofiber Orientationの左右心室間比較

松島 峻介1, 松久 弘典1, 篠原 玄2, 森田 紀代造3, 白石 修一4, 高橋 昌4, 金子 幸裕5, 築部 卓郎6, 大嶋 義博7 (1.兵庫県立こども病院 心臓血管外科, 2.JCHO九州病院 心臓血管外科, 3.榊原サピアタワークリニック 心臓血管外科, 4.新潟大学医歯学総合病院 心臓血管外科, 5.ニューハート・ワタナベ国際病院 心臓血管外科, 6.神戸赤十字病院 心臓血管外科, 7.加古川中央市民病院 心臓血管外科)
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キーワード:

心筋線維走行、右室体心室、SPring-8

【目的】
右室と左室の体心室としての遠隔期心室機能の差異に組織構造的な要因が考えられるが, 先天性心疾患における心筋繊維走行 (Myofiber Orientation) の知見は未だ乏しい. 位相差X線CT法では心筋をPerimysium単位で観察することが可能であり, 各種心標本にてその解析を行った.
【方法】
正常心, 心室中隔欠損例, 右側相同心, 左側相同心, 心室逆位例それぞれ3標本の計15標本を対象とした. 3D画像で各心室の自由壁中央を心表面と平行にスライスし, 各画像で心筋繊維のHelical Angle (HA) を求め心外膜面 (X=0) から心内膜面 (X=1) へプロットしHA曲線を作成した. 各HA曲線の形状, 3次近似時の変曲点 (Xi), 線形近似時の傾き (sHA), そしてスライス毎のHA変化率中央値 (dHA) を左右心室間で比較した. 結果はmedian [range] で表記した.
【結果】
全標本で右室左室共にHAは心外膜面のleft-handedから心内膜面のright-handedへ変移した. HAが心内膜面へ向かうにつれて左室では持続的に上昇するか壁中央にプラトーを形成する一方, 右室ではプラトーから始まり心内膜面近くで急峻に上昇する傾向があった. Xiは左室で0.51 [0.37-0.62], 右室で0.41 [-4.5-0.83] であり左室Xiが壁中央 (X=0.5) に有意に近かった (p<0.01). sHAは左室で114 [65-148]°, 右室で71 [35-104]°であり全標本において左室が高かった. dHAは左室で102 [60-120]°, 右室で55 [10-120]°であり左室が有意に高かった (p<0.01).
【考察】
Myofiber OrientationはCardiac Loopingとは独立していた. プラトーを形成し壁中央付近を変曲点として3次近似されるHA曲線はしばしば層状と表現される心室壁構造と一致する. 収縮力が強いとされるHelical Fiberを左室は右室に比べてより有する所見を正常心と各奇形心に共通して認め, Helical Fiberの違いが体心室機能の優劣の一端である可能性が考えられた.