講演情報

[II-CPD4-2]小児医療機器開発:発案から実現のプロセス

根本 慎太郎 (大阪医科薬科大学 医学部外科学講座 胸部外科学)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

医療機器開発、産学官連携、proof of concept

我が国でオープンイノベーションと称する大学のシーズ公開イベントが流行し、多くの企業が群がっている。いわゆる産学連携開発の推進である。しかし多くはデパ地下の味見程度の企業と虎の子シーズの共同研究費の獲得と業績蓄積が目的のアカデミアのお見合いである。私の方は様々な臨床・研究経験からの検討結果から既存医療材料の持つ世界的課題を解決するアイディアを持っているが、特段の技術シーズを開発する能力は持っていない。よって一からの製品化の共同開発を大手医療機器製造販売企業に掛け合う必要がある。“臨床的・社会的意義は理解できるが、ビジネスにならないので無理です。特に小児なんて・・・”がお決まりの返答である。“なにくそ”と医療機器事業化ステップと企業マインドを学習し、運命共同体の産学コンソーシアムを組むため、イベントから離れものづくり企業と製造販売業取得企業との個別折衝を行った。コンソーシアム結成後は、開発の手戻りを減らすためgoal orientedすなわち“事業化→償還価格と販路→薬事承認への治験→生物学的安全性の証明→製品規格決定、量産体制、品質保証→材料の選定と確保→非臨床コンセプト証明(有効性)と知財確保→試作品作製→コンセプト(シーズ)確定←マーケット調査←普遍的ニーズ”とステップを逆算して開始点を設定した。また全てのステップを水平同時展開した。強固な産学コンソーシアムに官が加わり、事業化推進への国の大型補助金(経済産業省、AMED)を獲得と規制当局PMDAからの早期の助言により開発の方向性と確度向上が可能となった。開始から約10年の2024年6月に独自開発の自己組織化誘導ハイブリッドニットを先天性心疾患領域の外科修復パッチとして上市に漕ぎつけた。治験で支援を得た本学会を中心に市販後調査研究が進んでいる。本発表では、アカデミアとしてこの開発でハブの役割を担った私の経験を提示する。