講演情報
[II-JHRSJS-1]電気的除細動のしくみ
○芦原 貴司 (滋賀医科大学 情報総合センター・医療情報部・循環器内科)
キーワード:
電気的除細動、植込み型除細動器、除細動閾値
致死性不整脈である心室細動に対しては,体外式除細動器や植込み型除細動器(ICD)を用いた電気ショックによる心室細動の停止,すなわち「電気的除細動」が有効な対処法であることは疑いようがない.昨今,そうした電気的除細動器のショック波形が二相性となり,ICDが高エネルギーショックを印加できるようになってからは,電気ショック強度が除細動閾値(DFT)を下回り,電気的除細動に失敗するようなことは極めて稀となった.それでも心筋症や心不全などの病態下で,もしくは抗不整脈薬の投与下などの特殊な状況下では,DFTの上昇することが知られている.万が一,電気的除細動に失敗したときの対策として,電気ショックに対する心筋反応の基本原理とともに,電気的除細動のしくみを理解しておくことは,除細動効率の改善に向けたヒントになると考えられる.とくに,二相性ショックにおける第2パルスの役割,電気ショックによる細動誘発の上限閾値(ULV)とDFTの関係,そしてそれらを理解するためのトンネル伝播仮説,電気ショックによる心筋障害などについては,重要性が高いものの,臨床現場ではあまり理解されることがない.本講演では,主にコンピュータシミュレーション(in silico)による理論研究に基づく視点から,電気的除細動のしくみを解説し,効率の良い電気的除細動のために,我々が注意すべきことは何か,そして小児にそれを適用するときの考え方などについて言及する予定である.