講演情報
[II-JHRSJS-2]小児に対する植込み型除細動器治療の現状
○竹内 大二 (東京女子医大病院 循環器小児・成人先天性心疾患科)
キーワード:
小児、突然死、植え込み型除細動器
小児に対する植込み型除細動器(ICD)治療は、成人とは異なる特有の課題を伴う。小児では体格が小さく、成長に伴うデバイス管理が複雑であることから、植え込み方法の選択や設定、さらに長期的な管理においても特別な配慮が必要とされる。ICDの主な適応疾患も成人と異なり、虚血性心疾患は稀である。小児から若年者では、肥大型心筋症、カテコラミン感受性多形性心室頻拍(CPVT)、QT延長症候群、特発性心室細動などが主な対象となり、多くは二次予防として植え込みが行われる点が特徴である。現在、小児におけるICD植え込み法には、心外膜リードを用いるEpi-ICD、経静脈リードによるTV-ICD、そして皮下植え込み型のS-ICDが選択肢として存在する。小児や若年者では心拍数が高く、身体活動も活発であり、さらに成長による体格の変化も大きいため、ICDの不適切作動やリードトラブルのリスクが高い。このため、ICDの作動設定による誤作動の予防や、ショック出力の適切な調整が極めて重要となる。また、長期的には、成長に応じたリードの抜去やデバイスの交換、植え込み方法の変更(たとえばEpi-ICDからS-ICDやTV-ICDへの移行)も必要となる。近年では、胸骨下に留置し抗頻拍ペーシング機能を備えた第4のICD、すなわち血管外ICD(Extravascular ICD: EV-ICD)の国内導入が期待されており、小型化・抗頻拍ペーシング機能を兼ね備えた新技術として注目を集めている。一方で、ICD植え込みに関しては日本不整脈心電学会により施設基準が設けられており、安全性確保の観点からもその遵守が求められている。しかし、施設基準における電気生理学的検査数などの要件は、小児専門病院では充足が困難な場合もあり、制度的なハードルとなっているのが現状である。