講演情報

[II-MSS-1]より良い医療の未来を紡ぐ、患者参加型医療

田中 和美 (群馬大学 大学院医学系研究科 医療の質・安全学)
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キーワード:

医療安全、患者参加型医療、共同意思決定

近年、医療はますます高度化・複雑化・多様化し、「医療は経済の中で最も複雑な分野であり、病院は人類史上、最も複雑な組織である」と言われるようにまでなった(Drucker P. Managing in the next society, NY, St. martin’s Griffin 2002)。医療現場においては、多職種、多診療科、多部門が複雑に相互依存、連携しており、チーム医療の重要性がますます高まってきた。同時に、患者・家族は医療ケアチームの一員であるという考え方も広まり、「患者参画」、「患者家族参画」、「患者参加型医療」、「患者中心の医療」、「共同意思決定」といった言葉をよく耳にするようになってきた。2021年に世界保健機関(WHO)から刊行されたGlobal Patient Safety Action Plan 2021-2030 (GPSAP)は、7つの戦略目標で構成され、医療者個人、医療機関、教育機関、国といった様々なレベルでの患者安全行動計画が示されているが、戦略目標4として「Patient and family engagement」が掲げられている。群馬大学医学部附属病院(以下、当院)においては、2014年に大きく報道された腹腔鏡手術による医療事故以降、様々な改革を行ってきた。医療事故再発防止に向けた提言の中には、「患者参加の促進」という項目も盛り込まれ、患者との情報共有を図り、患者中心のチーム医療、患者参加型医療を推進していくことが当院の使命であると記載されている。これを受けて、当院における医療事故のご遺族らも委員として参加する患者参加型医療推進委員会を中心として、患者とのカルテ共有、インフォームド・コンセントの録音などについて検討を重ね、全国に先駆けた取り組みを実践してきた。本発表では、「患者参画」の概念や、患者安全の国際的な動向についても紹介した上で、当院における患者参加型医療の推進に関する取り組みとその成果、患者・家族との関わりの中での新たな気づき、今後の展望などについて共有したい。