講演情報
[II-OR17-02]無脾症候群における単心室治療術後の長期成績と死亡リスク因子の検討
○徳田 雄平1, 小谷 恭弘1, 小林 泰幸1, 門脇 幸子1, 小林 純子1, 黒子 洋介1, 佐野 俊二2, 笠原 真悟1 (1.岡山大学学術研究院医歯薬学域 心臓血管外科, 2.昭和大学 江東豊洲病院 心臓血管外科)
キーワード:
無脾症候群、総肺静脈還流異常症、房室弁逆流
【背景】無脾症候群(Asplenia)は現代においても死亡リスクが高い疾患である. 今回Aspleniaの姑息術後における死亡リスク因子について解析した.【方法】1990年から2021年の間に, Aspleniaに対して当科で初回単心室治療介入した150例に対して, 後方視的に検討した. 2心室修復術を行った患者1例は除外した. 生存期間はKaplan-Meier法で, 死亡リスク因子はCox回帰分析で解析した. 追跡期間の中央値は7.5(0.84-18.6)年だった.【結果】初回介入時の年齢中央値は52(19-273)日, うち54例(36%)は新生児期に介入した. 総肺静脈還流異常症(TAPVC)合併は66例(44%), 肺動脈閉鎖合併は51例(34%)だった. 房室弁(AVV)修復術は53例(35%)に施行された. 84例(56%)がFontan手術へ到達した. 全死亡率は43%(64/150)で, 5年後と25年後の生存率はそれぞれ66. 4(58.0-73.4)%と54.1(44.1-63.1)%だった. 全コホートの多変量解析において独立した死亡リスク因子はTAPVC修復のみで, AVV修復, シャント循環, AVV修復とシャント循環の併施との関連はなかった. TAPVCを有した患者のみのコホートでは, 多変量解析で新生児期のTAPVC修復と下心臓型TAPVCが独立したリスク因子だったが, AVV修復, シャント循環, 混合型TAPVCとの関連はなかった. 全患者をAVV修復とTAPVC修復で層別化すると, 15年後の生存率はAVV/TAPVC修復なしの群(第1群)で73.4(59. 7-83. 1)%, AVV修復のみの群(第2群)で60. 0(40.1-75.2)%, TAPVC修復のみの群(第3群)で42.8(26.0-58.6)%, AVV修復+TAPVC修復群(第4群)で33. 1(10.9-57.6)%だった(p=0.002). 第1群と第2群, 第3群と第4群の間に生存率の差はなかった(それぞれp=NS).【結論】Aspleniaの治療成績は満足するものではなかった. シャント循環とAVV逆流は死亡リスクと関連はなかったが, 新生児期のTAPVC修復や下心臓型TAPVCは死亡リスクと関連があった. 当院ではTAPVCについて新生児期に介入を避けるdelayed repairの方針を取っている.