講演情報
[II-OR17-05]複雑先天性心疾患患者の手術シミュレーションを可能とする軟質3D心臓モデルの実用化に向けて
○白石 公1, 山岸 正明2, 盤井 成光3, 帆足 孝也4, 犬塚 亮5, 坂本 喜三郎6, 笠原 真悟7, 鈴木 孝明4, 新川 武史8, 芳村 直樹9, 黒嵜 健一1 (1.京都府立医科大学 小児心臓血管外科, 2.国立循環器病研究センター 小児循環器内科, 3.国立循環器病研究センター 小児心臓外科, 4.埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓血管外科, 5.東京大学医学部 小児科, 6.静岡県立こども病院 心臓血管外科, 7.岡山大学病院 心臓血管外科, 8.東京女子医科大学 心臓血管外科, 9.富山大学 心臓血管外科)
キーワード:
複雑先天性心疾患、3D printing、手術シミュレーション
複雑先天性心疾患の外科手術の困難さを少しでも解決することを目標に、我々は心臓CT画像情報から3D printingと真空注型をハイブリッドさせた方法で、切開・縫合による手術シミュレーションが可能な精密軟質モデルを開発した。2022年に20例での医師主導治験を終了し、2023年7月に管理医療機器(クラス2、手術計画支援心臓模型)に承認され、2024年12月に保険適応希望書を提出した。適応疾患は日本小児循環器学会WGで決められた複雑先天性心疾患11疾患である。緊急及び準緊急手術は適応としない。診断目的に撮影された心臓CT画像情報(DICOM、再構成幅≦1.0mm)から、画像処理ソフト(Mimics, Materialize; Geomagic Freeform Plus, 3D Systems)を用いて心臓大血管の外型と内腔を解剖学的異常に基づき抽出する(STL画像)。画像は依頼医による承認をうけた後、光造形(SOUP2 600GS, CMET; SCS-8100, Sony)により心臓大血管の内外の鋳型を3D printingし、二者間に軟質ウレタン素材(Hapla Pudding Gel, Polysis; Young率, 61.9~65.1KPa(小児心臓組織≒59.1KPa))を真空下で注型する。最後に内外の鋳型を取り除き、心臓モデルを完成させる。出来上がった心臓モデルは工業用CT(METROTOM 800, Carl Zeiss)を用いて非破壊検査し、患者の元画像情報と比較して(VGSTUDIO MAX3.0, Volume Graphics)、内層外層の全表面積の平均誤差≦2.0mmのものを完成品とする。発注から完成までを14日以内としている。この3D心臓モデルは任意の切開線から心臓内腔を隈なく観察できるため、解剖学的診断だけでなく手術術式の決定の支援に大きく役立つ(治験結果より)。また切開・縫合による手術シミュレーションが可能なため、事前に手術のリハーサルを行うことで複雑先天性心疾患の手術をより確実で安全なものとし、患者の救命と予後改善に寄与することが期待される。(本機器はcrossMedical社との共同研究により開発された。)