講演情報

[II-OR18-02]当院における新生児手術症例に対する胎児診断の影響に関する検討

庭野 陽樹, 浅井 英嗣, 夷岡 徳彦 (北海道立子ども総合医療・療育センター 心臓血管外科)
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キーワード:

胎児診断、新生児手術、術前状態

【背景】先天性心疾患の中には、出生直後に治療が必要となる症例も存在する。胎児診断は出生後の迅速な治療介入を可能にする一方で、予後への影響に関する報告は限られている。特に北海道では搬送時間が長いため、救命の観点からリスクの増大が懸念され、治療可能な施設での分娩が推奨される。【目的】当院における新生児手術例を対象に、胎児診断率や胎児診断が術前状態および予後に及ぼす影響を検討した。【対象・方法】2014年8月から2025年1月の間に、当院で新生児に対して実施された209例の手術症例を後方視的に分析した。特に、出生直後の手術介入が多いCoA(30例)、TGA(29例)、TAPVC(19例)、HLHS(15例)について詳細に検討を行った。【結果】未熟児PDAを除く新生児手術症例における胎児診断率は40%であった。疾患別にみると、Aspleniaで100%、HLHSで73%と高い一方、TAPVCでは16%と低かった。胎児診断が及ぼす影響に関しては、CoA、TGA、TAPVCでは術前のBNP値が胎児診断ありの群(A群)で中央値がそれぞれ829 pg/ml、202 pg/ml、11 pg/mlであったのに対し、胎児診断なしの群(B群)では2149 pg/ml、1157 pg/ml、59 pg/mlと有意に高かった(p値:0.0188、0.0268、0.0324)。HLHSでは、術前のALT値がA群で中央値7 U/L、B群で15 U/Lと有意な差が認められた(p値:0.0029)。さらに、これら4疾患(93例)における緊急手術の発生率を比較すると、A群(n=38)では2例(5%)、B群(n=55)では14例(25%)と、A群で有意に少なかった(p値:0.0121)。術後経過については、PDやECMOの有無および入院中死亡率に有意差は認められなかった。【考察・結論】胎児診断は新生児手術症例において、術後経過への影響は限定的であるものの、術前状態の改善や緊急手術の発生抑制に寄与する可能性が示唆された。また、胎児診断率および診断精度の向上が治療成績の改善に貢献する可能性がある。文献的考察を加え報告する。