講演情報

[II-OR19-03]小児期肺静脈閉塞性疾患に対する生体片肺移植の可能性

赤木 健太郎1, 馬場 志郎1, 福村 史哲1, 久米 英太朗1, 平田 拓也1, 滝田 順子1, 栢分 秀直2, 田中 里奈2, 中島 大輔2, 伊達 洋至2 (1.京都大学医学部附属病院 小児科, 2.京都大学医学部附属病院 呼吸器外科)
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キーワード:

肺高血圧、肺移植、肺静脈閉塞症

【背景】内科的治療や姑息的血行動態変換によっても改善困難な肺高血圧症に対し肺移植は治療の最終手段となる。世界的には小児においても脳死両肺移植が主体であるが、緊急性が高い疾患においては、待機期間が極めて長い本邦では生体肺移植も治療選択の一つとなる。一方、肺静脈閉塞性疾患は、肺動脈性肺高血圧症に分類されるものの、肺静脈狭窄の存在から管理に難渋する。多くの症例で病態が急速に進行し、肺移植に到達できない症例も少なくない。このような症例に対しては脳死肺移植に拘らない治療選択が重要である。【症例】症例は3例の肺毛細血管腫症に伴う肺静脈閉塞症と1例のAlveolar capillary dysplasia with misalignment of the pulmonary veins。診断年齢は4ヶ月-5歳9ヶ月(中央値: 3歳7ヶ月)。診断から肺移植までの期間は1ヶ月-6年(中央値:11.5ヶ月)。移植時の体重は12-16kg(中央値;14.5kg)。いずれも母親の右下葉を患者右肺として移植した。4例中3例で移植前カテーテル評価を行っており、平均肺動脈圧(mmHg)はそれぞれ23, 43, 81、肺血管抵抗(U・m2)は4.1, 4.8, 16。いずれの症例もPH crisis発作による複数回の集中治療管理を要していた。術後はいずれの症例も有意な肺高血圧を認めず。肺血流シンチでは大半の血流が移植肺へ流入。移植後合併症として2例でPTLD発症を認めたが、全例でグラフト不全はなかった。【考察】我々が経験した肺静脈閉塞性疾患は、いずれも病態の悪化が早く経過も重篤であったが、生体肺移植により救命できた。体格などの問題から片肺移植となり、V/Qミスマッチを認めるものの血行動態として安定しており、生体片肺移植は治療選択肢となりうる。【結語】肺静脈閉塞性疾患を疑う場合は、早期に肺移植を念頭に置いた治療計画を立てる必要がある。