講演情報

[II-OR19-04]生体肝肺同時移植を行った先天性角化不全症 症例

馬場 志郎1, 岡本 竜弥2, 田中 里奈3, 外山 大輔4, 赤木 健太郎1, 福村 史哲1, 菅野 勝義5, 平田 拓也1, 池田 義5, 伊達 洋至3, 滝田 順子1 (1.京都大学医学部附属病院 小児科, 2.京都大学医学部附属病院 小児外科, 3.京都大学医学部附属病院 呼吸器外科, 4.東海大学医学部付属病院 小児科, 5.京都大学医学部附属病院 心臓血管外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

先天性角化異常、肝移植、肺移植

先天性角化不全症は、テロメア構成分子の異常により、爪形成不全、口内白斑、皮膚萎縮や再生不良性貧血などを発症する。特発性肺線維症を発症する症例もみられ、重症例は肺移植の適応となる。肝障害を合併する症例も多く、肺移植後に肝移植が必要となる症例が少なからず存在する。今回、特発性肺線維症を合併する先天性角化不全症患者が、門脈体循環シャントと それに伴う肺動静脈瘻を有し、世界で初めて生体肝肺同時移植を行った症例を経験した。症例は9歳 男児。2歳時に再生不良性貧血で他院入院し、先天性角化不全症と診断された。再生不良性貧血に対して4歳時に同種骨髄移植を受け、急性および慢性GVHDも認めず軽快退院となった。5歳頃から徐々にSpO2低下し、胸部Xpの透過性低下を認めた。さらに肺動静脈瘻(移植前シャント率 58.6%)が増悪し、経鼻酸素投与下でもSpO2 70%台と低下。9歳時に肺移植の目的で当院紹介となった。肺動静脈瘻の精査の結果、肝線維化、門脈圧亢進症、門脈体循環シャントを認め、肺移植を先行した場合はドナー肺にも肺動静脈瘻が発現する可能性が示唆された。肝障害の程度や肝肺症候群・門脈圧亢進症を有することから肝移植も適応があり、移植検討委員会や全国の各専門医による会議を経て生体肺同時移植の承認となった。9歳4ヶ月時に生体肝肺同時移植(父親:右下葉、母親:左下葉、父方祖父:肝左葉)を施行した。術後経過は良好で、術後1年経過した現在においても肺内シャントは認めず、肝臓、肺とも良好な状態を維持できている。肺移植施行の条件に、移植時において他の臓器異常が無いという条件があり、肝障害を有する本症例においては肺移植適応外となるが、肝肺同時移植を行うことで本条件をクリアし移植が可能であった。前述する様に、生体肝肺同時移植は世界初の手術であり、今後の方針の検討や症例の蓄積が期待される。