講演情報
[II-OR19-05]先天性横隔膜ヘルニアに伴う肺高血圧の治療と乳幼児期肺循環動態:単施設観察研究
○乙部 裕, 澤田 博文, 三谷 義英, 大橋 啓之, 武岡 真美, 坪谷 尚季, 大矢 和伸, 淀谷 典子, 原田 智哉, 平山 雅浩 (三重大学 大学院医学系研究科 小児科学)
キーワード:
先天性横隔膜ヘルニア、肺高血圧、心臓カテーテル検査
【背景】先天性横隔膜ヘルニア(CDH)は肺低形成を伴い、肺高血圧(CDH-PH)は主要な予後因子である。CDH修復術後もPHを認める例は、肺血管拡張薬での治療が行われるが、CDH-PH例の長期予後は不明である。【目的】長期治療を行ったCDH-PH例の肺循環動態を明らかにする。【方法】3次医療圏唯一の単施設での観察研究。2005-2024年に診療したCDH例の治療内容と検査所見を解析した。【結果】対象49例中、30例が急性期に一酸化窒素吸入で治療し、16例が肺血管拡張薬を併用した。14例(29%)は死亡した 。10 例(20%)が長期肺血管拡張薬または在宅酸素を使用し(長期治療群)、8例に2.2(1.7-4.4)歳時に心臓カテーテル検査(心カテ)、血管造影、片肺動脈閉鎖試験を行った。心カテ時の心エコーではPH所見(LVEI>1.1)を8例中2例に認めたが、心カテでは5例(63%)で平均肺動脈圧(mPAP)≧20mmHgまたは肺血管抵抗係数>2.0wu*m2の異常を認めた。片肺動脈閉鎖後、mPAPは健側閉鎖で上昇が大きく(健側+11.0[8.0-13.0]:患側+3.0[0.8-5.0]、p<0.05)、肺動脈造影で末梢肺動脈発育の左右差を認めた。生後半年以内の肺血流シンチグラフィでは長期治療群は長期治療なし例と比べ、血流(Tc-MAA )の左右差(健側/患側比)が大きかった(3.3[2.5-16.0]:1.7[1.3-2.5]、p<0.05)。長期治療群は心カテ前には左右差が軽減していた(1.4[1.0-2.5] 、p<0.05)。出生前診断でLT比が得られた33例中、低リスク(LT比≧0.08かつ肝嵌入なし)が20例、中または高リスク(LT比<0.08かつ/または肝嵌入あり)13例であり、死亡・長期治療は後者で多かった(7例:12例、p<0.01)。 心カテで異常を認めた例も後者が多かった(0例:5例、p<0.05)。【結論】長期治療を行うCDH-PH例の多くは、心エコー上PHは軽快するが、乳幼児期の心カテでは全CDH例の約10%でPHが持続し、肺血管床の形態的機能的左右差を認めた。出生前後のリスク層別化を踏まえた長期管理のさらなる検討が必要である。