講演情報
[II-OR20-01]先天性心疾患に関連した肺静脈狭窄の外科的再介入に対する解剖学的リスク因子の検討
○門脇 幸子, 吉田 文哉, 徳田 雄平, 倉田 裕次, 鈴木 浩之, 小松 弘明, 藤井 泰宏, 小林 純子, 黒子 洋介, 小谷 恭弘, 笠原 真悟 (岡山大学 学術研究院医歯薬学域 心臓血管外科)
キーワード:
再発性肺静脈狭窄、先天性心疾患術後、総肺静脈灌流異常症
【目的】先天性心疾患関連の肺静脈狭窄(pulmonary venous stenosis, PVS)修復を要した症例の再手術に対する解剖学的リスク因子を検討した。【方法】当院にて2009-2024年にPVS repairを施行した患者を対象とし、術前C Tより計測(図1)を行ない体表面積当たりの係数を変数として用いた。肺静脈長(pulmonary venous length, PVL)は心膜翻転部より中枢側で心房に流入するまでの長さと定義した。術後生存率はKaplan-Meire法、再PVS repairに対するリスクはWilcoxon test、Cox regressionで評価した。【結果】PVS repairを施行した42例(年齢中央値5.8ヶ月[Interquartile range, IQR, 2.4-9.8])中、21例(50%)に再手術を要した。内、9例(21%)に初回PVS repairを含め計3度、4例(10%)に計4度のPVS repairを施行した。総肺静脈灌流異常症術後でない症例は8例(19%)、単心室症例は24例(57%)であった。術後観察期間の中央値は3.9年(IQR 1.5-9.3)、PVS repair後1、7年の生存率はそれぞれ85%(以下95%信頼区間, 71-93)、 60% (43-84)であった。単変量解析にて非心尖部側PVLは40 mm/m2 未満で再手術のリスクが高く(Hazard ratio, HR, 2.2 [0.9-5.2], p=0.04)、心尖部側PVL は40 mm/m2 以上で再手術のリスクが高かった (HR 2.7 [1.1-6.4], p=0.04)。心臓左右径は200 mm/m2 以上で有意に再手術のリスクが上昇した(HR 3.5[1.5-8.3], p=0.008)。左右肺静脈間距離、胸骨椎体間距離、胸郭左右径、心臓前後径、心尖椎体間角度、心房後壁椎体間距離に有意差を認めなかった。多変量解析にて、単心室(HR 0.31[0.10-0.90], p=0.03)、非心尖部側PVL(HR 0.95[0.91-0.98], p=0.002)、心臓左右径(HR1.02[1.001-1.03], p=0.04)が有意な再手術のリスク因子であった。【結論】非心尖部側肺静脈が短い、すなわち心尖部側肺静脈が長いほど、また、心臓左右径が大きいほどPVSに対する再手術のリスクとなり得る。一方で、単心室は再手術のリスク因子ではなかった。