講演情報

[II-OR20-03]総肺静脈還流異常症術後の肺静脈狭窄に対する外科治療

永田 恵実1, 若松 大樹1, 今坂 堅一1, 桃井 伸緒2, 青柳 良倫2, 林 真理子2, 川島 綾子2, 高野 峻也2, 細矢 薫子2 (1.福島県立医科大学 心臓血管外科, 2.福島県立医科大学 小児科)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

総肺静脈還流異常症、肺静脈狭窄、外科手術

【背景】総肺静脈還流異常症(TAPVC)の術後合併症である、術後肺静脈狭窄(PVO)は未だ予後にかかわる重篤な病態であり、期を逸しない治療を要する。【目的】当院でのTAPVC術後PVOに対する治療成績を検討する。【結果】2006年1月から2025年2月の間、当院でTAPVCに対し心内修復術を行った25例を対象とした。狭窄部血流速度が1.8m/s以上あるものをPVOと定義し、心不全症状や肺高血圧を認める場合はその時点で外科治療を行う方針とした。術後PVOを来した症例は5例(20%)で、Darling分類は1a:4例、2a:1例であった。初回手術時日齢は9.8日(1-21日)、体重は2893g(2190-3300g)で、手術は1aの2例でprimary sutureless repairを行い、また2aではcut backを行った。PVOの診断は初回術後4ヶ月(1-14ヶ月)になされ、4例が3ヶ月以内であった。全例で再手術を要し、再手術は初回術後10ヶ月(1-38ヶ月)に行った。そのうち3例ではPVOの初回診断時にすみやかに外科治療の方針とした。手術は4例が吻合口拡大のみを行い、現在まで再狭窄なく経過している。残る1例は、吻合口拡大に加えrt. lateral approachによる右肺静脈-左房吻合の追加を行った。この症例は1a症例で、初回手術時にsuperior approachによる吻合を行ったが、術後1ヶ月で吻合部に2.3m/sの加速を認めた。そのため吻合形態に問題が生じたと考えられ、吻合口拡大のみでは再再狭窄が懸念される症例であった。再手術後、初回吻合部は1.6m/sと狭窄が残存したが、追加した吻合口では加速は認めず、心不全の改善を得た。現在再手術後1年3ヶ月が経過し、両吻合部に2.0m/sの加速を認めているが、心不全や肺高血圧は来しておらず、慎重に経過観察中である。【結語】全例が術後PVOに対し外科治療を要したが、その後追加治療は要さず良好な結果であった。再手術は、原則吻合口拡大のみを施行しているが、再再狭窄が懸念される症例ではlateral approachによる吻合口追加が有用であった。