講演情報

[II-OR22-02]動脈管におけるプロスタグランジンE2受容体EP4の発現と転写制御領域の検討

岡 沙由稀1, 黒滝 大翼2, 菊池 健太2, 中山 俊宏1,3, 内田 敬子1, 横山 詩子1 (1.東京医科大学 細胞生理学分野, 2.熊本大学 国際先端医学研究機構 免疫ゲノム構造学研究室, 3.東京医科大学 小児科・思春期科分野)
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キーワード:

動脈管、EP4、転写制御領域

【背景】プロスタグランジンE2(PGE2)はEP4受容体を介して動脈管を開存させるが、EP4欠損マウスは動脈管開存症を発症することから、PGE2-EP4シグナルは動脈管閉鎖に必要であることが示唆されている。しかしながら、胎生期の動脈管におけるEP4の発現制御機構は未解明である。【目的】動脈管におけるEP4の発現様式と転写制御領域の検討を目的とした。【方法】Ptger4-IRES2-nlsLacZ マウスを作製し、胎生11日(E11)から出生後14日(P14)にかけてのEP4発現をX-gal染色で評価した。EP4の発現制御機構の検討のため、E14の野生型マウスから上行大動脈と動脈管を採取してATAC-seqとCUT&Tagを行い、E14とE18の上行大動脈と動脈管を用いてbulk RNA-seqを行った。また、Ptger4上流部分の欠損マウスを5系統作製した。【結果】X-gal染色では胸腔内臓器のうちE14以降の動脈管でのみEP4発現を認め、その発現は胎生満期に向けて最大となり、P14までに消失した。ATAC-seqとCUT&Tag ではPtger4の上流から次の遺伝子座までの非翻訳領域において、両解析で共通する動脈管特異的なピークが3領域で確認された。これらの部位には転写因子のTfap2、Hox、Fox、Six、Thr、RunxファミリーのDNA結合部位が存在することが示唆された。上記ファミリーに属する9つの転写因子はbulk RNA-seqにおいて動脈管特異的に高発現していた(>2.0-fold change、n=3)。単独でこれら3領域を欠損させたマウスはいずれも動脈管開存症を発症しなかったが、3領域を含む900 kbp(E900)を欠損させると、EP4欠損マウスと同様に、出生直後の動脈管におけるEP4の発現が完全に消失し、動脈管開存症を呈してP2までに死亡した。さらに、転写開始点から670 kbp離れたE900の後半にあたる360 kbpにわたる領域を欠失させたところ、全例で動脈管開存症が認められた。【結語】動脈管における部位特異的、時期特異的なEP4の発現はPtger4上流の複数の領域により制御されている可能性がある。