講演情報

[II-OR22-03]ヘッジホッグシグナルの阻害は肺動脈性肺高血圧症の進行を抑制する

櫻井 牧人1, 細川 奨1,2, 山口 洋平1, 石井 卓1 (1.東京科学大学 発生発達病態学分野, 2.武蔵野赤十字病院 小児科)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

肺高血圧症、ヘッジホッグ、血管リモデリング

【背景】ヘッジホッグ(HH)シグナル伝達経路は、胚発生や組織の恒常性維持に重要な役割を果たしており、血管リモデリングや肺動脈性肺高血圧症(PAH)の進行に関与している可能性も示唆されているが、PAHにおける病態生理学的役割は明らかではない。【方法】C57BL/6J雄性マウスを低酸素環境(10% O2 )で3週間飼育し、肺高血圧を誘導した。低酸素暴露1週間後から、特異的HHシグナル阻害剤シクロパミン(H+C群、n=12)、または溶媒(H群、n=12)を14日間投与し、室内気(21% O2)で飼育した同種の雄性マウス(N群、n=8)をコントロール群とした。心臓カテーテルによる血行動態評価、抽出肺組織の組織学的解析およびシングルセルRNA シークエンスを実施した。また、ヒト肺動脈平滑筋細胞(hPASMC)を低酸素培養(5% O2)後、シクロパミンを投与し、細胞増殖アッセイで増殖能を評価した。【結果】H + C群では右室収縮期圧 (H + C : 31mmHg vs H: 38mmHg, p<0.01)、Fluton Index (H + C : 0.28 vs H : 0.37, p<0.01)、および肺小動脈の筋性化がそれぞれ有意に低下した。またシクロパミン投与は低酸素暴露によるhPASMCの細胞増殖を濃度依存性に抑制した。シングルセルRNAシークエンスでは、H + C群の抽出肺の血管内皮細胞および平滑筋細胞において、血管平滑筋収縮やcGMP-PKG経路に関連する遺伝子群が抑制されていた。hPASMCのRNAシークエンスでは、シクロパミン投与は低酸素暴露による細胞外マトリックス制御に関連する遺伝子の発現変化を回復させた。【結論】本研究結果から、HHシグナル阻害が肺動脈性肺高血圧症の進行を抑制する効果を持つことが示唆された。HHシグナルは肺高血圧症の重要な治療標的となる可能性がある。