講演情報
[II-OR24-06]肺動脈スリングに対する外科的治療成績
○五十嵐 仁, 廣瀬 圭一, 伊藤 弘毅, 中村 悠治, 前田 登史, 渡部 聖人, 菅藤 禎三, 安野 優樹, 坂本 喜三郎 (静岡県立こども病院 心臓血管外科)
キーワード:
肺動脈スリング、PA sling、気管狭窄
[背景/目的]肺動脈スリングは、左肺動脈が右肺動脈の後面から異常発生し、気管と食道の間を通って左肺の肺門に達するまれな先天異常である。肺動脈スリングの外的圧迫による気管狭窄や、完全輪状軟骨輪のような内因性異常を有することが多い。今回われわれは肺動脈スリングに対する外科的治療成績に対する検討を行った。[方法/対象]2008年以降、当院で施行された肺動脈スリングに対して外科的治療を行った20例を後方視的に検討した。合併心疾患は9例であり、心室中隔欠損4例、Fallot四徴症1例、両大血管右室起始2例、部分肺静脈還流異常1例、右肺動脈狭窄1例であった。右側肺低形成/無形成を2例に認めた。手術時年齢中央値3.0カ月(0-159カ月)、手術時体重中央値4.9kg(2.3-16.2kg)。左肺動脈移植を18例に施行し、右肺低形成のために右肺動脈離断および気管位置変更を行った症例と気管狭窄が軽度の症例の2例は左肺動脈移植を施行しなかった。併施手術は14例(重複あり)であり、気管形成10例、心室中隔欠損閉鎖3例、Fallot四徴症修復1例、両大血管右室起始修復2例、部分肺静脈還流異常修復1例、右肺動脈形成1例であった。人工心肺時間中央値200分(66-571分)、心停止時間中央値0分(0-119分)。[結果]観察期間中央値31カ月(0-188カ月)。病院死亡4例、遠隔死亡0例であった。死亡症例はいずれも気管形成術を併施した症例であり、手術時年齢および手術時体重が低い傾向があった。術後早期に気管形成を新たに追加した症例を1例に認めた。生存例における左肺動脈移植部に対する再介入は0例、気管形成部に対する再介入は0例であった。[結語]肺動脈スリングの外科治療成績は他の報告と比較しても悪くないものであった。左肺動脈移植部の経過は良好であり、気管狭窄に対する介入の判断は妥当であったと考えられる。文献的考察を加えて報告する。