講演情報
[II-OR26-02]新生児遷延性肺高血圧症の管理中に動脈管性ショックに至ったcircular shuntを伴わないEbstein病 ーいつ心筋異常を疑うかー
○齋藤 寛治1, 松尾 悠1, 工藤 諒1, 西村 和佳乃1, 佐藤 啓1, 桑田 聖子1, 中野 智1, 齋木 宏文1, 辻 龍典2, 小泉 淳一2, 小山 耕太郎3 (1.岩手医科大学 小児科, 2.岩手医科大学 心臓血管外科, 3.みちのく療育園)
キーワード:
Ebstein病、左室緻密化障害、拡張障害
背景:胎児Ebstein病は多様な選択肢から症例毎に最も適切な治療を取捨選択する疾患であり, 出生前血行動態が治療戦略決定に重要な情報となる. 左室前負荷は肺循環, 右心系拡大, 心房間交通に規定されるが, 小さな左室では心筋特性の判断が時に困難である.症例:心拡大を主訴に在胎36週で当院紹介となった. 心胸郭面積比53%の心拡大とplasteringを伴う高度三尖弁逆流を認め, Ebstein病と診断した. Celermajer 指数 0.9, 三尖弁逆流血流速度は3.5 m/sec, 動脈管は右左短絡であり, 出生後の肺血管抵抗低下により循環適応は可能と判断した. 37週6日, 胎児徐脈のため緊急帝王切開で出生した. Apgar 1/3/5点であり, 挿管呼吸管理のうえNICU入室した. TRPG 74mmHg, 動脈管は右左短絡で新生児遷延性肺高血圧と診断し, NO吸入療法を開始した.循環安定とともに肺血管拡張薬を内服に移行したが, 動脈管を介した左右短絡により循環不全と臓器障害を発症したため, 緊急動脈管閉鎖および右房縫縮を施行した.循環は安定し在宅管理としたが, 右心系拡大は改善なく, また肺血管拡張薬に反応しない肺高血圧が遷延した. 各種治療によっても左室前負荷確保が困難であることに加え, 心筋緻密化障害を示唆する心筋形態から右室容量負荷とは独立した左室拡張障害を疑い, 心臓カテーテル検査による負荷試験から診断を確定した. 胎児心エコー所見では左室心筋形態に加え左室流入時間短縮を認めないことから心筋異常を疑うことができた可能性がある. 結論:心筋緻密化障害は先天性心疾患の中でもEbstein病にしばしば合併することが報告されている. 心筋緻密化障害合併例では, 右心系拡大に伴う拡張期心室間連関による拡張障害に加え, 心室特性としての拡張障害の診断に苦慮する. 肺血管抵抗低下に伴い左室前負荷が追従しない症例では心筋障害の可能性を考慮する必要があり, また早期から心筋緻密化障害合併を念頭に置く必要がある.