講演情報

[II-OR26-03]Redundant Foramen ovale flap aneurysm (RFOA)による低形成左室の発育様式

桑田 聖子, 齋藤 寛治, 佐藤 啓, 中野 智, 齋木 宏文 (岩手医科大学 小児科学講座)
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キーワード:

胎児RFOA、左室低形成、左室拡張予備能

【背景】胎児RFOAは卵円孔狭小を伴わず胎児期の偽性大動脈縮窄と心室バランス異常を来すと報告されている.今回,高度低形成左室を伴ったが拡張障害の管理を行い二心室循環に適応できた症例を報告する.
【症例】在胎21週に左室流出路狭窄を指摘され、左室低形成が顕在化し在胎31週に当院に紹介. 左室・大動脈の形態異常は認めず,右室長28.3mm(z 0.36)に対し左室長15.2mm(z -5.7)と左室は小さく, 卵円孔は形態的に良く開放しており左心低形成症候群(HLHS)を考慮しての分娩計画となった.在胎39週, 出生体重3990g,身長55.0cm,Apgar score 8/9で出生.出生後には大きな心房中隔瘤が右房側に張り出し, 右室は肉柱が粗造で心筋肥厚を認めた. 心尖は右室により形成され, 左室はLVDd 15.3mm(69%N)と小さく, 全周性の菲薄化(LVPWTd1.3mm(35%N))と壁運動低下を認めた.僧帽弁φ10.2mm(90%N), 大動脈弁φ5.6mm(72%N)で大動脈縮窄は明らかでなかった. 動脈管が右左短絡優位のためLipo PGE1を使用し左室駆出率低下に対し循環作動薬を併用した.約3週間かけて心筋は肥厚し左側胸部誘導の低電位と駆出率は改善した. 左室は体循環心室として機能可能な容積と壁厚に発育したが, 肺高血圧遷延と動脈管閉鎖遅延を認めた.拡張早期僧帽弁輪運動速度(e’)の低下が遷延し, ドブタミンで心拍数のみが増加する循環から左室拡張障害によるpassive PHを考え水分制限と利尿剤投与で管理した. 日齢31に動脈管は閉鎖し,約3か月かけて左室の長軸方向の成長に伴い弛緩能と心電図所見の正常化を認めた.
【考察】胎児RFOAは偽性大動脈縮窄やHLHSとの関連について報告が増えているが, その病態は卵円孔狭窄とは異なり, 左室拡張予備能の存在, つまり容量負荷が可能であることを示す. 左室が一見左室心筋症やHLHS同様の心電図・左室形態変化を示しても, 心室以外の要素に低形成が無ければ壁肥厚・内腔・心電図所見のいずれも追従できる可能性がある.