講演情報
[II-OR26-04]単純性または複雑性大動脈縮窄症の胎児における予後予測指標の検討
○池川 健1, 川瀧 元良2, 加藤 昭生1, 若宮 卓也1, 小野 晋1, 柳 貞光1, 上田 秀明1 (1.神奈川県立こども医療センター 循環器内科, 2.神奈川県立こども医療センター 新生児内科)
キーワード:
大動脈縮窄症、胎児、予後予測
【背景】Simple CoAとCoA complexでは, 出生後の経過は異なり, Simple CoAでは出生後に手術が不要なことが多い。CoAの胎児診断に大動脈峡部(IS) Z score, 動脈管径/大動脈峡部径(DA/IS), 小さい左心系構造が有用とされているが, Simple CoAとCoA complexのそれぞれで検討したものはない。【目的】Simple CoAとCoA complexと診断された胎児における新生児期の手術介入を予測する指標を明らかにすること。【方法】2018-2024年にSimple CoAまたはCoA complexと胎児診断された症例を対象とした。染色体異常例, 左室流出路狭窄例は除外した。後方視的に妊娠後期の胎児心エコー所見, 出生後の手術介入を含む診療情報を得た。エコー指標はIS・DA・僧帽弁(MV)・三尖弁(TV)の径を計測し, IS Z score, DA/IS, MV/TVについて, 新生児期に手術介入をした(S)群と, 非介入(non-S)群とで比較検討を行った。【結果 ()内は(S群の平均±SD:non-S群の平均±SD)】Simple CoAのS群は7例, non-S群は9例。IS Z score(-9.01±0.93:-7.81±1.33)で有意差はなかった。DA/IS(3.53±0.80:2.60±0.49), MV/TV(0.47±0.08:0.60±0.07)では有意差を認め, DA/ISが2.75以上で感度100%, 特異度66.7%, MV/TVが0.51以下で感度85.7%, 特異度88.9%で新生児期の手術介入を予測した。一方, CoA complexのS群は13例, non-S群は2例。DA/IS(3.81±1.36:1.80±0.09), MV/TV(0.69±0.17:0.79±0.08)で有意差はなかった。IS Z score(-9.26±1.15:-4.65±0.92)では有意差を認め, IS Z scoreが-5以下で感度100%, 特異度100%で新生児期の手術介入を予測した。【考察】CoA complexでは出生後に左心系の血流が増加しても, 右心系に血流が逃げるため, ISは拡大しにくい。そのため, 胎児期のIS形態は新生児期と近く, IS Z scoreが新生児期の手術介入の予測に有用であった。【結論】Simple CoA とは異なり, CoA complexではIS Z scoreで新生児期の手術介入が高精度で予測できた。