講演情報

[II-OR26-05]胎児スクリーニングで見逃される不完全型重複大動脈弓におけるRF angleの有用性

森 雅啓, 石井 陽一郎, 海陸 美織, 西野 遥, 加藤 周, 長野 広樹, 林 賢, 松尾 久実代, 浅田 大, 青木 寿明 (大阪母子医療センター 循環器科)
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キーワード:

重複大動脈弓、血管輪、胎児心エコー

【背景】重複大動脈弓(DAA)は、左/右大動脈弓(LAA/RAA)の両方が残存することで気道が圧迫され、生後早期に呼吸障害を引き起こしうる先天性心疾患である。RAAと第一分枝の角度(RF angle)は、DAA群ではRAA群と比較して急峻な角度(71度未満)を示すことを、過去に当学会で報告した。一方、DAAのうち不完全型重複大動脈弓(iDAA)はLAAが閉鎖しligamentとなるが、鏡像型RAAと形態が近似するため胎児診断が困難とされている。
【目的】RF angleがiDAAの胎児診断に有用か検討する。
【対象・方法】2015年から2025年の間に当院で胎児心エコーを実施し、出生後に血管輪と確定診断された症例(iDAA群、RAA群:RAA, RAA+左鎖骨下動脈起始異常(ALSCA))を対象に、RF angleを後方視的に解析した。
【結果】対象症例はiDAA群5例およびRAA群18例(鏡像型RAA3例、RAA+ALSCA15例)であった。iDAA群は胎児期には3例が鏡像型RAA,2例が完全型DAAと診断されていた。iDAA群の全例が生後手術をうけ、RAA群は18例中4例が手術を受けた。RF angleはiDAA群で42-58(中央値57)度、RAA群で62-113(中央値88)度であり、iDAA群の方が有意に急峻であった(p<0.05)。RAA群のうち1例はRAAと診断されながらもRF angleが62度と急峻であった。RFangleはcut off値70度以下で感度100%、特異度94%であった。
【考察】iDAAは、CT検査において連続する血管索による鎖骨下動脈の後下方への牽引・屈曲や下行大動脈の憩室の存在から診断が疑われ、術中にligamentの存在を確認することで確定診断がされる。これらを胎児心エコーで診断することは困難である。RFangleの急峻さは、第一分枝である鎖骨下動脈の後下方への屈曲を反映していると考える。
【結語】iDAAはRAAと比較してRF angleが急峻であり、生前のスクリーニング検査としては有用と考えた。胎児診断が困難とされる、iDAAの胎児診断に貢献できる可能性がある。