講演情報
[II-OR28-04]心不全のある子どもと家族の日常を大切にした看護師の緩和ケア実践とその中にある葛藤
○上田 沙絵1, 新家 一輝2 (1.よどきりこども訪問看護ステーション, 2.名古屋大学大学院 医学系研究科 総合保健学専攻)
キーワード:
心不全、小児、緩和ケア
【背景】 小児心不全は、生命を脅かす疾患の1つであり、小児緩和ケアの対象となるが、治すことに重点が置かれ、QOLが保障されにくい現状がある。【目的】小児心不全患者とその家族の価値観や希望を大切にし、日常を保障するために看護師が行っている緩和ケア実践と、その中で生じる葛藤について明らかにする。【方法】研究デザインは、質的記述的研究である。小児専門病院3施設と循環器専門病院1施設に勤務する/した経験のある看護師に、半構造化面接を行った。研究者所属倫理審査委員会の承認を得て実施した。【結果】対象者は、小児循環器疾患患者ケア経験年数1~25年(平均9.1年)の看護師8名であった。分析の結果、【入院中でもその子らしい日常を保障する】【入院や治療に伴う苦痛を緩和し、子どもにとっての安楽を大切にする】【子どもと家族の思いや価値観、意向を聴き、一緒に考え判断をともにする】【子どもと家族の価値観や思いをつなぎ、ケアに活かす】【子どもと家族の思いを大切に、成長発達していけるよう関わる】【きょうだいの思いや希望に目を向けて家族を支援する】【子どもの最期の時間をともに過ごし、死別後も家族と関わる】の7カテゴリーが抽出された。中でも看護師は、緩和ケア実践として、病状悪化や終末期など何かあった時にアプローチするというよりも、日々関わりを積み重ねる中で子どもと家族と信頼関係を築き、思いを聴き、一緒に考え、良いことも悪いことも経験する時間を、子どもと家族とともに過ごしていた。【考察】生涯に渡り治療が必要で、病状等による様々な制限が常にある心不全児の日常保障には、子どもと家族の声を聴き、希望を叶え、治療を受けながらもその子らしくいられる時間を保障することが重要である。また、長期入院や入退院を繰り返す場合は、入院生活の中に日常があるため、それぞれの子どもにとっての今を大切に、入院時から日常を大切に関わることが重要である。