講演情報

[II-OR28-05]重症心不全の小児患者における症状評価スケール作成と臨床応用への取り組み

望月 星七1, 田中 靖彦2, 眞田 和哉2, 沼田 寛2 (1.静岡県立静岡こども病院 看護部, 2.静岡県立静岡こども病院 循環器科)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

症状評価スケール、重症心不全、緩和ケア

【背景】近年、重症心不全の小児患者に対する緩和ケアへの重要性が高まっている。小児における心不全症状は多様で把握が難しい。また、小児は成長発達に応じた個別的な支援が求められる。当院では、循環器科スタッフの緩和ケアチームへの参加により、小児の疼痛評価に用いられるFLACCスケールを基に、重症心不全の小児患者に適した症状評価スケール(以下スケール)の作成を試みた。本研究では、その作成過程と臨床応用について検討した。【目的】重症心不全の小児患者を対象とするスケール作成の過程および評価の取り組みを報告すること。【方法】対象は当院に入院する重症心不全の小児患者とした。FLACCスケールの要素に加え心不全に関連する項目を追加したスケールを作成し、三段階(0~2点)で評価可能な9項目を設定した。作成したスケールの妥当性について、緩和ケアチームと協議の上、検討した。【結果】新たなスケールの導入により、看護記録に評価項目に含まれる症状に関する記述が増加し、スタッフ間での患者の状態共有が円滑化された。加えて、診療録との併用により、症状の変化がより明確に捉えられるようになった。一方で、心不全症状と直接結びつかない項目も含まれていた。また、副次的な効果として、家族不在時の患者の状況を家族に伝えるツールとしても活用可能であることが示唆された。【考察】医療スタッフは、日常ケアや家族との関わりを通じて、患者特性を捉え、個別性を考慮し支援を行っている。作成したスケールと診療録を併用し、患者の症状を可視化することで、スタッフ間だけでなく家族との共通認識の形成にも寄与する可能性がある。一方で、全項目が適切に機能するとは限らず、スケールの定期的な見直しが必要である。【結論】本スケールは、重症心不全の小児患者における個別性を重視した緩和ケアの質の向上に寄与する可能性が示唆された。今後さらなる検証と臨床現場への普及が求められる。