講演情報
[II-P01-1-07]イスラム教を信仰する家庭に出生した先天性心疾患児の1例
○江畑 亮太1, 椛沢 政司2, 鋪野 歩1, 高田 展行1, 青木 満2, 松尾 浩三2, 寺井 勝1, 立野 滋1 (1.千葉市立海浜病院 小児科, 2.千葉市立海浜病院 心臓血管外科)
キーワード:
先天性心疾患、イスラム教、ハラーム
【背景】イスラム教は世界三大宗教の1つであり、国内でも約20万人の信者がいる。イスラム教の信条ではブタの摂取はハラームとして禁じられており、ブタを原材料として含む医薬品も忌避される傾向にある。【症例】日齢0、女児。父母はインドネシア出身のイスラム教信者。在胎16週時に一絨毛膜一羊膜双胎(MM双胎)のため当院に紹介となった。在胎26週の胎児超音波で両大血管右室起始(false Taussig-Bing anomaly)と診断した。在胎34週にMM双胎のため予定帝王切開で出生(第2子)。出生体重は1622g、アプガースコア7点(1分)、7点(5分)。出生後肺血流増加による肺うっ血、呼吸障害が進行し、日齢10に肺動脈絞扼術を施行した。その後チアノーゼの増悪(経皮酸素飽和度 50~60%)を認め、日齢11に経皮的心房中隔裂開術を施行した。出生後、輸液製剤へのヘパリンナトリウム(ブタ腸粘膜由来)(以下ヘパリン)添加について医療者間で議論となり、イスラム教の信条を考慮しヘパリンは添加しないこととした。その後、ご両親の意向を確認したところ「ブタはだめ」とのことだったため、院内倫理委員会とも相談し、学会、および海外での診療経験医師に問い合わせを行った。その結果「代替療法がない場合、または代替療法が治療期間を延長する場合、ヘパリンによる治療は許容され、通常は投与されている。施設によっては同意書を作成している」との回答(演者要約)だった。その回答を踏まえ、当院では説明・同意文書を作成し、同意を得た上で経皮的心房中隔裂開術施行時にはヘパリン投与を行った。【考察・結語】イスラム教を信仰する家庭に出生した先天性心疾患新生児でヘパリン投与(ブタ由来医薬品)の可否について検討が必要な症例を経験した。今後の人口減少社会において様々なバックグラウンドを持つ患者に対応することが求められていることを再認識した。