講演情報

[II-P01-1-09]単心室症と気管軟化症を含む多発奇形症候群に対して疾患の軌跡を共有し、家族の意思決定支援を行う意義

中島 公子1, 佐々木 祐登1, 稲田 雅弘1, 浅見 雄司1, 畑岡 勉4, 松永 慶廉4, 岡村 達4, 山口 有3, 橘木 浩平2, 下山 伸哉1, 池田 健太郎1 (1.群馬県立小児医療センター 循環器科, 2.群馬県立小児医療センター 集中治療科, 3.群馬県立小児医療センター 遺伝科, 4.群馬県立小児医療センター 心臓血管外科)
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キーワード:

緩和ケア、家族の意思決定支援、先天性心疾患

【背景】先天性心疾患は重症児でも手術や集中治療管理で状態改善が期待できるため、最期まで積極的治療が行われることが多い。しかし、治療を継続しながらPICUで最期を迎えるケースも多く、緩和ケア介入のタイミングが課題となる。今回、単心室症と気管切開を要した多発奇形症候群の患児において、家族と医療者が疾患の軌跡を共有し、終末期の意思決定支援を行った経験を報告する。【症例】1歳8か月の女児。胎児診断で染色体異常と先天性心疾患、唇顎口蓋裂を指摘され、出生後18p部分モノソミー、16q部分トリソミーと診断。心形態は肺動脈閉鎖を伴う単心室血行動態で、両側動脈管に対してプロスタグランジン製剤を投与。生後3か月で両側体肺短絡術後、気道閉塞を繰り返し気管軟化を認め、生後5か月で単純気管切開施行。生後6か月頃には血行動態安定し一般病棟へ転棟。母は看護師で自宅退院を希望していたが、生後9か月頃に左動脈管拡張による心不全悪化でPICUへ入室。コイル塞栓により心不全は軽快し、1歳で再度一般病棟へ転棟。しかし循環作動薬や鎮静の減量に伴い心不全が再増悪。1歳5か月で慢性心不全管理が困難となり、患児の予想される疾患の軌跡を家族に示し、救命不可能になる時期が明らかではないものの近い時期であることを共有した。直後に吸引時の蘇生を契機にPICUへ再入室。一般病棟とPICUの医療者で家族支援を行い、家族の治療継続への想いも尊重しつつ、緩和的方針を共有。本児の重症度からPICU以外での看護は困難で、面会制限や家族が行えるケアの制約が終末期の課題となった。兄弟面会などを調整し、最終的に終末期の積極的治療は希望されず、両親の抱っこのもと1歳8か月で永眠された。【結語】緩和ケアは患児を主体に考えられるべきであるが、子供との死別体験は、その後の家族の精神的健康に深く影響するため、PICUでの家族支援も重要であり、具体的方法を模索中である。