講演情報

[II-P01-2-09]摂食障害で入院加療を行った児の心血管合併症の検討

森崎 敦夫1, 三浦 大2, 前田 潤2 (1.東京都立小児総合医療センター 児童・思春期精神科, 2.東京都立小児総合医療センター 循環器科)
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キーワード:

摂食障害、徐脈、低血圧

【背景】摂食障害は思春期男児の0.5%, 女児の1-2%に生じる精神疾患であり, 10%と死亡率が高い. 死亡の半数は自殺だが, 残りは心血管合併症によるものが多い. 摂食障害における心血管合併症は徐脈, 低血圧, QT間隔の変化などが指摘されている一方でその実態の報告は少ない.
【方法】2022年1月1日から2024年12月31日に東京都立小児総合医療センター児童・思春期精神科に摂食障害の診断で入院した149例のうち選択基準(転入症例を除いた身体合併症のない初回入院例のうち血液検査, 心電図検査および心拍数モニタリングを実施)を満たした59例の年齢, 性別, 体重の推移, 標準体重比, 入院3日以内に実施した検査および結果, 転帰について後方視的に検討した.
【結果】56例が女児(94.9%)であった. 入院中の死亡例はなかった. 平均年齢は13.2±2.0歳であった. 標準体重比は67.7±8.6 %で, 過去の最大体重からの減少は-9.6±5.5 kg, 直前1か月からの減少は-1.1±1.6 kgであった. 血液検査と心電図検査, 心拍数モニタリングは全例に実施されていたが, 心臓超音波検査は全例実施されていなかった. 心拍数モニタリングは44.7±9.0 bpm, 収縮期血圧は87.8±9.4 mmHgであった. 収縮期血圧が90 mmHg以下は40例(67.8%), 80 mmg以下は15例(25.4%), 70 mmHg以下は3例(5.1%)だった. 心拍数モニタリングで60 bpm以下は57例(96.6%), 40 bpm以下は22例(37.3%), 30 bpm以下の徐脈は2例(3.4%)だった. 心電図検査では55.6±12.6 bpm, QTc 425.6±44.2 msec, Bazett式による補正値(QTcB) 405.7±23.9 msecであり, QTcBが460 msec以上は1例のみであった. 血液検査ではBUN 15.6±7.1 mg/dL, Cre 0.63±0.14 mg/dL, Na 140.5±2.4 mEq/L, K 4.0±0.4 mmol/L, Ca 9.3±0.4 mg/dL, IP 3.9±0.6 mg/dL, Mg 2.3±0.2 mg/dLであった.
【結語】摂食障害の児には高度の徐脈や低血圧をきたす一群が含まれるが, QT間隔が延長している症例は少なかった.