講演情報

[II-P01-2-10]急変を未然に防ぐために~心臓アラートによるリスク分類の試み~

今井 祐喜, 安田 和志, 菅原 沙織, 山田 佑也, 伊藤 諒一, 野村 羊示, 田中 優, 鬼頭 真知子, 河井 悟 (あいち小児保健医療総合センター 循環器科)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

先天性心疾患、リスク分類、急変

【背景】先天性心疾患(CHD)は少なからず他の臓器系疾患を併せもち、各専門診療科の治療を要する。侵襲的処置はCHD患者にとって状態悪化のリスクを伴うが、診療に携わる医師は、病名或いは児の身体所見からCHDの重症度を必ずしも予見できない。当院では過去に専門診療科の処置中に生じた“防ぎえた急変”で失った例を経験している。【目的】急変を予見・関連スタッフ間で共有し、リスク別に処置時の環境整備を行うための『心臓アラート』の試みについて報告。【心臓アラート(以下アラート)】全てのCHD患者を循環器科医師により3段階の重症度に分類している。赤アラート:重症或いは急変リスクあり。処置・検査にあたっては必ず循環器科に事前連絡し、処置当日の体制を協議する。必要に応じてICU医師に全身管理を依頼する。対象は重度心不全、重度肺高血圧、チアノーゼ発作リスク、シャント依存血行動態、並びに致死性不整例。黄:処置・検査時にモニタリング及び救急カートを準備する。対象は赤及び後に示す緑以外の例。緑:特別な対応は不要。対象は血行動態的に懸念のないCHDあるいは根治術後の例。当院出生例に留まらず、他院から各診療科に紹介されるCHDもアラート分類が未の状態で侵襲的処置を行ってはならない。【考察】アラートの導入でどの程度の急変が回避できているかの評価は難しい。しかし各診療科の医師のみならず、処置に携わるコメディカルとの間でも事前にリスクを共有できる点でアラートは重要視されている。また、循環器病棟においても処置前のbriefingではアラートに言及し、より簡便な形でリスクを共有している。問題点としてはアラートによりover triageされている例が少なからず存在し、以前に比較してモニタリングなどが必要な例が増加したこと(現場負担の増加)、分類の対象となる児の病態は変化するためその都度アラートの再評価が必要なこと(循環器科医師の負担)などが挙げられる。