講演情報
[II-P01-3-04]姑息的に垂直静脈と右室流出路に経皮的ステント留置を行った右室型単心室・総肺静脈還流異常の一例
○山口 修平, 前田 潤, 伊澤 美貴, 吉田 真由子, 妹尾 祥平, 山田 浩之, 小山 裕太郎, 永峯 宏樹, 大木 寛生, 三浦 大, 山岸 敬幸 (東京都立小児総合医療センター)
キーワード:
肺静脈狭窄、壊死性腸炎、ステント留置術
【背景】機能的右室型単心室・肺静脈狭窄を合併した総肺静脈還流異常症の生後早期の手術予後は不良であり,肺静脈狭窄に対する経皮的ステント留置術が報告されている。また右室流出路狭窄疾患の手術困難症例に対して経皮的右室流出路ステント留置術が選択されることがある。両者を併用して乳児期早期の手術を回避し,両方向性Glenn手術に達した報告はない。【症例】1歳2か月の男児。在胎38週6日,3212gで出生。胎児期から無脾症,完全型房室中隔欠損,左室低形成,両大血管右室起始,肺動脈弁・弁下狭窄,左上大静脈遺残,上心臓型総肺静脈還流異常,肺静脈狭窄と診断されていた。日齢5に新生児壊死性腸炎(NEC)を発症し,右半結腸切除術を施行。日齢12に垂直静脈狭窄に経皮的ステント留置を行い,肺静脈狭窄は改善した。4か月時に右室流出路狭窄のためチアノーゼが進行。拡張期の腸管血流を維持し、NEC再発を防ぐため,体肺シャントではなく、経皮的右室流出路ステント留置を行った。5か月時に垂直静脈ステント内および左上大静脈の狭窄による肺うっ血・肺高血圧を認め,経皮的バルーン拡張術を行うも効果に乏しく,外科的に総肺静脈還流異常修復術を施行した。8か月時に共通肺静脈腔-左房吻合部再狭窄の解除術を要したが,1歳2か月時に両方向性Glenn手術を行い、以後の経過は良好。【考察】垂直静脈狭窄に対するステント留置により、肺静脈狭窄は改善し、新生児期の総肺静脈還流異常修復術を回避可能であった。また,肺血流確保の方法として右室流出路ステント留置術を選択し,NECの再燃なく、経腸栄養を進めることができた。【結論】肺静脈狭窄および右室流出路狭窄を伴う複雑型心疾患で,NECを合併し手術のリスクが高い症例に対しても,新生児期,乳児期早期の手術を回避する姑息的治療として,経皮的ステント留置術は有効な選択肢となり得る。