講演情報
[II-P01-4-02]当院における成人移行未了患者の検討
○井福 俊允1, 山下 尚人2, 入佐 浩史1, 西口 俊裕3 (1.宮崎県立宮崎病院 小児科, 2.宮崎県立宮崎病院 新生児科, 3.宮崎県健康づくり協会)
キーワード:
成人先天性心疾患、トランジション、ドロップアウト
【背景・目的】当院は宮崎県央に位置し、小児循環器学会修練施設として多くの先天性心疾患患者を診療している。成人先天性心疾患(ACHD)患者が増加する中で、種々の理由で成人領域へ移行できていない患者が存在する。当院における移行未了患者の特徴と対応について検討した。【対象・方法】2015年から2024年の10年間に当科外来を受診した15歳(高校生)以上のACHD患者を抽出し、疾患背景、成人領域への移行状況、定期薬・知的障害/遺伝子染色体異常・ドロップアウトの有無について、診療録・当事者への聞き取りをもとに後方視的に検討した。ACHD専門医や循環器内科医の診療を受けていない、あるいは移行のメドが立っていない患者を移行未了(Not yet transitioned: NT)群と定義した。川崎病、器質的異常を伴わず治療不要な不整脈患者は対象から除外した。【結果】対象となった277例のうちNT群は44例(15.9%)で、移行未了の主な理由は診療ドロップアウト(32例)、重度知的障害・重症心身障害(5例)、本人・家族希望(4例)、移行先検討中(2例)、死亡(1例)だった。ドロップアウト例の大半は軽症~中等症で投薬や運動制限がなく、高校卒業や就職の前後で受診が途絶える傾向にあった。重度知的障害・重症心身障害患者は併存疾患を有する例が多かったが、他診療科と概ねスムーズな併診体制が構築できていた。社会的な理由で意思決定を本人・家族以外が行っている患者もみられた。【考察】ドロップアウト例は医療者から連絡を取り受診を促しているが、連絡がつかなくなる患者もおり対応にしばしば苦慮する。進学・就職先の把握や疾患教育をより一層徹底するとともに、診療リマインダーアプリの活用を検討している。重度知的障害・重症心身障害患者は小児科でのフォローアップを継続される傾向にあった。全例循環器内科へ紹介することを目指すのではなく、個々の疾患背景や医療体制に応じて柔軟に連携していく必要がある。