講演情報

[II-P01-4-04]地域中核病院における先天性心疾患の移行医療の課題と解決策

平野 立1, 進藤 孝洋1, 生井 良幸1, 犬塚 亮2 (1.太田西ノ内病院 小児科, 2.東京大学医学部附属病院)
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キーワード:

成人先天性心疾患、移行医療、地域医療

【背景】福島県内で先天性心疾患(CHD)手術を行っている施設は大学病院のみで、成人先天性心疾患(ACHD)専門外来は福島県立医科大学を中心に展開されている。郡山市に位置する当院では、月に1回の小児心臓専門外来と、非専門である循環器内科により、CHD非手術施設としてACHD診療をおこなっている。【目的】当院CHD患者の成人移行の実態を把握する。【方法】2020年1月から2025年3月の間に当院小児循環器外来を受診した、ACHD患者(最終受診時年齢20歳以上とした)の診療録を後方視的に調査した。診療体制に成人循環器内科・内科が参画している例を移行例とした。【結果】患者数は43人(女性22人51.2%)、年齢は中央値34.0(20.0-56.4)歳、単心室循環は4人(9.3%)、発達遅滞がある患者は9/39人(23.1%)であり、全移行割合は97.7%であった。成人移行できなかった症例は1例で、歌舞伎症候群が背景にある大動脈弁狭窄症術後の22歳であった。一般小児科、小児循環器科、小児外科、耳鼻咽喉科による診療を継続中である。【考察】橋本らによる単施設報告では、成人非移行率は63/240人(26.3%)でありリスク因子は染色体・遺伝子異常や発達遅滞と報告されている。当院経験では、成人移行を難しくすると報告されたリスク患者の成人非移行率はそれぞれ1/21人(4.8%)、1/9 人(11.1%)と高くなかった。同報告と当院での結果には大きく差があるが、当院での成人移行先がACHD非専門施設であった割合が33/42人(78.6%)であり、ACHD非専門の循環器内科による診療協力が大きく得られている実態が伺えた。ただし本研究の大きなLimitationとして、当科では単心室循環患者の割合が少なく、ACHD患者の疫学との乖離を生じている点が挙げられる。【結語】当科はACHD非専門の循環器内科と診療連携を行うことにより、高い成人移行率が確認できた。