講演情報
[II-P01-4-06]当院における成人先天性心疾患症例の就学や就労のまとめ
○田中 智秀1, 加護 祐久2, 佐藤 浩之2, 田中 登2, 原田 真菜2, 松井 こと子2, 福永 英生2, 高橋 健3, 秋本 かつみ2, 稀代 雅彦2, 東海林 宏道2 (1.順天堂大学 医学部附属 静岡病院 小児科, 2.順天堂大学 医学部 小児科, 3.順天堂大学 医学部附属 浦安病院 小児科)
キーワード:
成人先天性心疾患、社会福祉、自立支援
当院における成人先天性心疾患症例の就学や就労のまとめ【背景】成人先天性心疾患(ACHD)患者は、治療や通院のため就学や就労に影響を受けている。日本の医療制度では、成人期の先天性疾患に対する専門的な支援が不足しており、患者が継続的な治療や社会参加を維持するためのサポートが不十分な場合もある。今回、当院におけるACHD患者の就学・就労に関してカルテを用いて後方視的に行い、現状の評価を行う。【方法】当院ACHD外来に受診中の18歳以上の患者56例を対象とした。【結果】対象の年齢は24.36±4.06歳、男女比は33:23で21 trisomy症例は2例であった。二心室循環例が38例、単心室循環が17例、1.5心室循環が1例で、ペースメーカ留置は3例、ICD留置は1例、HOT導入は2例であった。肝臓がん発症は1例、蛋白漏出性胃腸症合併は1例認めた。14例(25%)が身体障害者手帳の認定を受けていた。肺血管拡張薬導入は3例で、いずれも多剤併用であった。21例(38%)が現在も両親のいずれかの付き添いの下、外来受診をしていた。学業に関しては53例(94%)が高校を卒業し、42例(75%)が大学もしくは専門学校へ進学し、18例(32%)は現在も在学中であった。30例(54%)が現在就労しており、その内5例(16%)で就労支援や障害者雇用を利用していた。現在未就労の8症例(14%)では肝臓癌、蛋白漏出胃腸症の合併、HOT導入例、鬱病などの精神疾患や発達障害の疑い例などが含まれ、一度就職するも離職する事例も認められた。二心室循環と単心室循環で進学、就職率に有意差は認めなかった。【考察】就学が進んでいる一方で、合併症や精神疾患、発達障害などが就労を妨げる要因となっていた。就労支援や障害者雇用に関する情報提供を積極的に行い、患者が適切なサポートを得られるよう支援体制を整え、多領域にわたる診療体制を整えることが必要と考えられる。