講演情報
[II-P01-5-01]診断に3Dエコーが有用であったIsolated Cleft Mitral Valveの一例
○清水 敬太1, 上桝 仁志1, 美野 陽一1, 中田 朋宏2 (1.鳥取大学医学部 周産期・小児医学分野, 2.島根大学医学部附属病院 心臓血管外科)
キーワード:
isolated cleft mitral cleft、僧帽弁逆流、3D経胸壁心エコー
【背景】僧帽弁cleft (MVC) は通常、房室中隔欠損 (AVSD) に合併する先天性僧帽弁逆流 (MR) の原因となる病態である。Isolated Cleft Mitral Valve (ICMV)はAVSDの伴わない孤立性のMVCである。今回我々は3D経胸壁心エコー (3D-TTE) で診断したICMVを経験した。【症例】症例は生来健康な5歳女児。長引く咳嗽を主訴に近医を受診した際、心雑音を指摘され精査目的に当院へ紹介となった。Levine 5/6の収縮期逆流性雑音と拡張期雑音に加え奔馬調律を聴取した。胸部レントゲンでは心胸郭比56.7%の心拡大と肺うっ血像があり、採血ではBNP 43.1 pg/mL と軽度の上昇を認めた。2D-TTEではsevere MRと左心の拡大があり、明らかな心内構造奇形、左室壁の菲薄化や乳頭筋断裂を認めず、心収縮は保たれていた。複数回行った2D/3D-TTEでICMVと診断した。手術適応と考え手術施設へ紹介し、僧帽弁形成術が施行された。術後経過は良好で、MRはtrivial-mild程度で推移している。【考察】ICMV自体稀な疾患とされるが、小児期の診断治療例の報告は少ない。成人で心雑音や労作時の息切れ・疲労感などの症状が診断の契機として多く、緩徐進行性の病態であると考えられる。2DエコーにおけるMVCの診断は、僧帽弁の連続性の破綻や独立した僧帽弁前尖 (AML) の独立性の動きとして捉えられるが、描出診断に熟達が必要である上にAVSDが無ければMVCは想起しにくい。一方で3Dエコーでは弁を立体的に描出し、cleftも視覚化されるため診断に有用である。本症例でも2D-TTE基本断面でAMLのわずかな逸脱を認め、短軸像で僧帽弁の連続性破綻を疑い、心尖部像でMVCを示唆する所見を得た。加えて3D-TTEではAML cleftが明瞭に描出され、確定診断に至った。ICMVは、AVSDのない小児のMRの原因として見落とされやすく、2D-TTEのみでは診断が困難が場合がある。MRの程度が成因に比して強い場合は、ICMVも念頭に置いて3D-TTEも用いて精査を進めるべきである。