講演情報

[II-P01-5-04]肺動脈閉鎖における体肺動脈短絡術後の肺体血流比と下行大動脈の逆行性血流/順行性血流比との関連性

佐藤 智幸, 五味 遥, 森田 裕介, 横溝 亜希子, 古井 貞浩, 岡 健介, 松原 大輔, 関 満, 田島 敏広, 小坂 仁 (自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児科)
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キーワード:

心エコー、体肺動脈短絡術、肺動脈閉鎖

【背景】肺動脈閉鎖(PA)を伴う先天性心疾患(CHD)に対し、肺血流維持のために行われる体肺動脈短絡術(systemic-to-pulmonary artery shunt: SPS)後では、適切な肺血流調節が重要である。実臨床において、心エコーによる下行大動脈(DAo)の逆行性血流/順行性血流比(R/F ratio)(速度時間積分)を、肺体血流比(Qp/Qs)の間接的な評価として用いることがあるが、SPS後におけるR/F ratioとQp/Qsの関連性を評価した研究はなく、現時点では定まった評価とはなっていない。
【目的】SPS後のPAを伴うCHDにおいて、DAoのR/F ratioとQp/Qsとの関連性を明らかにする。
【方法】診療録による後方視的研究。対象は2015年1月から2024年12月の間に心臓カテーテル検査とその1か月以内に心エコーを施行したSPS後のPAを伴うCHD。中等度以上の大動脈弁閉鎖不全、主要体肺動脈側副血管、肺動静脈瘻合併例、心エコー画像不良例は除外した。カテーテル検査によるQp/Qsと心エコーによるDAoのR/F ratioとの相関を算出した。また臨床的に適切なQp/Qs(0.8-1.8)を示すR/F ratioを探索した。
【結果】条件に合致した25症例の解析を行った。月齢中央値14.2か月(4.1-37.8)、平均体重7.5±2.2kg、単心室症例は11例(44%)だった。平均Qp/Qsは1.53±0.45、DAoの平均R/F ratioは0.38±0.06で、Qp/QsとDAoのR/F ratioとの相関係数は0.75(95%CI 0.50-0.88)であった。また、DAoのR/F ratioを0.3-0.45の範囲に区分すると、感度95%、特異度50%でQp/Qsが0.8-1.8の指標となった。
【考察】SPS後のPAを伴うCHDにおいて、心エコーによるDAoのR/F ratioは間接的にQp/Qsを評価可能な指標となる。臨床上、R/F ratioが0.3-0.45の間にあれば、適切なQp/Qsが維持されていると示唆される。