講演情報

[II-P01-5-05]Sutureless法による総肺静脈還流異常修復後の左房機能の検討

藤野 光洋1, 大城 佑貴1, 桝野 浩章1, 中村 香絵1, 佐々木 赳1, 川崎 有希1, 鈴木 嗣敏1, 荒木 幹太2, 小澤 秀登2, 鍵崎 康治2, 杉山 央1 (1.大阪市立総合医療センター 小児医療センター 小児循環器不整脈内科, 2.大阪市立総合医療センター 小児医療センター 小児心臓血管外科)
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キーワード:

総肺静脈還流異常、Sutureless、左房ストレイン

【緒言】総肺静脈還流異常(TAPVC)に対するsutureless法は、肺静脈と心房壁の吻合は行わず、肺静脈切開周辺の心膜を左房後壁に縫合して修復する手技で、従来の手法と比べ良好な術後成績が報告されている。その一方で、sutureless法による修復術が左房機能に及ぼす影響については明らかになっていない。【目的】Sutureless法で修復されたTAPVCの左房機能を明らかにすること。【対象と方法】2016年から2022年にTAPVC修復術を施行した16例を対象とし, Sutureless法(SL群8例)とそれ以外の従来の手法で修復した群(CR群8例)の2群間での臨床所見、心臓超音波検査所見(TTE)そして心臓カテーテル検査所見を後方視的に比較検討した。左房機能は、Area-length法での最大左房容量と2D speckle tracking法による左房ストレインを用いて評価した。【結果】初回手術年齢は中央値日齢14(SL:CR=8:36日, p=0.01), 再手術例は5例(総手術回数 2-5回)。TTE評価時年齢は3.5歳(SL:CR=2.5:4.5歳, p>0.05)。左室駆出率, 僧帽弁通過血流速度(E波, A波), E/A, そして組織ドプラ法での僧帽弁輪速度(e’, a’), E/e’については両群で有意差はなく、最大左房容量係数も有意差はなかった(SL:CR=22.8:16.7ml/m2, p=0.12)。左房ストレインは、リザーバー機能(LASr), 導管機能(LAScd)は両群で有意差はないものの、ブースター機能(LASct)がSL群で有意に低下していた(SL:CR=5.7:8.6%, p=0.02)。心臓カテーテル検査では、症例全体で左室拡張末期圧(LVEDP)と LASctは有意に負相関したが(r=0.47, p<0.01)、両群間ではLVEDPに有意差なく(SL:CR=12:9mmHg, p=0.11)、心拍出量も両群で有意差はなかった。【結語】TAPVC術後の左房ストレインは正常心と比べ低下していることが報告されているが, 特にsutureless法による修復後は心房ブースター機能が従来の手法で修復された例よりも低下している可能性がある。