講演情報

[II-P01-5-07]リンパ管シンチグラフィが治療戦略に有用であった術後難治性乳び胸水の2例

小澤 由衣, 河島 裕樹, 土居 秀基, 渡辺 恵子, 西木 拓己, 水野 雄太, 榊 真一郎, 白神 一博, 益田 瞳, 犬塚 亮 (東京大学医学部附属病院 小児科)
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キーワード:

乳び、リンパ管、リンパ管シンチグラフィ

【背景】心臓手術後に起こる難治性乳び胸腹水に対しては,内科的治療や中心静脈圧が上がる病態に対して介入を行っても改善がない場合,リンパ管治療が考慮される。リンパ管シンチグラフィを行うことで,リンパ流の鬱滞・逆流があるのか,または破綻があるのかの鑑別ができ,それぞれに対して前者はリンパ管静脈吻合(LVA),後者はリンパ管造影(LVG)が適当となる。小児領域においてリンパ管シンチグラフィの有用性が明らかでないことから,今回術後難治性乳びに対してリンパ管シンチグラフィを行った2症例を提示し,その有用性について考察する。
【症例1】総肺静脈還流異常症に対して日齢12に修復術を施行。術後乳び胸が遷延し内科的治療,胸管結紮,LVG, LVAも奏効せず,リンパ管シンチグラフィを施行した。静脈の早期描出がなくLVAは閉塞が疑われた。リンパ液は右下腹部から腋窩を経由し横隔膜へとドレナージされており,腹腔内でのLVAを行う方針として,腹腔リンパ管卵巣静脈吻合を行った。乳び腹水は消失したが,腹水漏出により保たれていた腎機能が悪化し,腎不全で死亡した。
【症例2】トリソミー21,心室中隔欠損症及,心房中隔欠損症の児。月齢2に心内修復術を施行。術直後,下大静脈狭窄から腹水著明となり,下大静脈形成術を行った。術後腹水は消失したが乳び胸が遷延し内科治療を行った。手術による外傷を疑いリンパ管シンチを施行したが,外傷は認めず,中心リンパ管の破綻が認められた。胸水は一度消失し,絶食2週間をおいたのちに経腸栄養を開始したが,乳び胸が再燃した。LVA, LVGを行い,その後は胸水が増悪なく経過している。
【考察】難治性乳び胸水に対する治療は,リンパ流の評価が正しく行われていないと,胸管結紮などの外科介入がさらなる病態の悪化につながる可能性もあり,リンパ管シンチグラフィによりリンパ流を評価することで,より有効な治療戦略を立てることが可能になると考える。