講演情報
[II-P01-6-02]小児におけるMarfan症候群およびLoeys-Dietz症候群の大動脈拡大に対するアンジオテンシンII受容体拮抗薬の抑制効果
○竹平 健1, 齋藤 美香1, 小林 匠1, 吉敷 香菜子1, 上田 知実1, 濱道 裕二1, 矢崎 諭1, 嘉川 忠博1, 森崎 裕子2, 大類 いずみ2 (1.榊原記念病院 小児循環器科, 2.榊原記念病院 臨床遺伝科)
キーワード:
マルファン症候群、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、大動脈拡張
【背景と目的】マルファン症候群(MFS)および類縁疾患は、大動脈の進行性拡張を特徴とし、解離や破裂のリスクが高い。アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の大動脈拡張抑制作用が期待され予防的内服が行われるようになったが、小児に対する有効性の報告は多くない。【方法】2004年1月から2024年1月までに当院外来受診歴のある小児MFS類縁疾患 33名のうち、疑い例を含む内服未開始のMFS8例、LDS2例および、経過中にARBを内服し、内服前後に経胸壁心エコー検査が実施されているMFS7例、LDS4例を対象とした。内服開始例では、Valsalva洞径のz-scoreを指標とし、ARB内服前後の血管径変化を後方視的に検討した。【結果】MFSは改訂Ghent基準を用いて診断を行い、遺伝子検査は4例で施行、全例FBN1に病的バリアントが認められた。LDSはTGFBR1または2の変異で診断した。家族歴を有した5例のうち2例は遺伝子検査を行わず、systemic score7点以上で診断した。内服未開始10例の平均年齢は12.4±6.1歳(中央値14.5歳)、初診時年齢は平均8.4±5.9歳(中央値9.2歳)、z-scoreは平均0.78±1.1(中央値0.95)であった。内服開始11症例の平均年齢は15.5±4.8歳(中央値17.0歳)、初診時年齢は平均5.5±4.9歳(中央値4.2歳)であった。ARB内服開始時の年齢は平均11.5±4.6歳(中央値13.7歳)、z-scoreは平均4.4±1.4(中央値4.2)であった。2例は内服開始後に血管径の拡大を認め、うち1例は内服開始から4.4年後に上行置換術を施行された。他9例では拡大傾向は認めなかった。【考察と結論】内服後に拡大傾向を認めた2症例は初診時年齢が比較的高年齢であり、z-scoreも5以上で内服開始前から既に拡大していたが、多くの症例では内服後にValsalva洞径の拡大が抑制されていた。家族の合併症歴やz-score増加率を考慮し、比較的低年齢でもリスクが高い症例では、内服の導入によりvalsalva洞拡大を抑制できる可能性が示唆された。