講演情報

[II-P01-6-05]ENG遺伝子のバリアントを認め、小児期に急速に進行した重症びまん性肺動静脈瘻の症例

山田 安奈1,2, 竹中 颯汰2, 鵜飼 啓2, 安田 昌広2, 木村 瞳2, 小山 智史2, 篠原 務2 (1.小牧市民病院 小児科, 2.名古屋市立大学大学院 医学研究科 新生児・小児医学)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

遺伝性出血性末梢血管拡張症、肺動静脈瘻、ENG遺伝子

【はじめに】肺動静脈瘻のおよそ半数は遺伝性出血性末梢血管拡張症(HHT)合併症例である。HHTは、反復性鼻出血、皮膚の毛細血管拡張、内臓血管奇形を特徴とし、常染色体顕性遺伝をする疾患である。ENG遺伝子変異により起こるHHTは1型とされ、肺や脳に動静脈奇形をきたしやすい。【症例】初診時6歳の男児。主訴:運動時の息切れ。現病歴:1歳から顔と耳の毛細血管拡張を認め、運動時に顕在化した。3歳で医療機関を受診した際SpO2 96%だった。幼少期は運動時に口唇チアノーゼを認め、同年代の子に比べて疲れやすく、鼻出血を繰り返していた。就学前に心配になり受診された。家族歴:父親も幼少期に毛細血管拡張があった。初診時SpO2 83%で頬部に毛細血管拡張を認めた。胸部レントゲンでは肺動静脈瘻を疑わせる結節陰影を認めず、心拡大もなかった。心エコーで先天性心疾患や肺高血圧所見はなかった。造影CTで、右肺底部に肺動脈と肺静脈が連続する数mm大の蛇行した脈管様構造を認め、肺動静脈瘻と診断した。肺血流シンチグラフィでシャント率は38%だった。肝臓や頭頚部に動静脈瘻を認めなかった。Curacao基準3/4項目を認めHHTを疑った。以後、肺動静脈瘻は両肺にびまん性に進行し、塞栓術は困難な状況で経過した。7歳でSpO2 70%台となり在宅酸素を開始した。10歳でSpO2 60%台まで低下し、日常生活での軽い体動で息切れが出現した。12歳でCOVID-19に罹患し呼吸症状が増悪し、肺移植登録を行った。ENG遺伝子バリアントc.1807G>A, (p.Gly603Arg)を認めLikely pathogenicであった。13歳で感冒を契機に心不全が増悪し、入院加療を要した。その半年後に再び感冒契機に心不全が悪化し、入院28日目に逝去された。【考察】本症例は家族歴が乏しいがENG遺伝子のバリアントはLikely pathogenicであり、臨床的にHHT1型に類似していた。非常に重篤な進行性の肺動静脈瘻の症例であったため報告する。