講演情報

[II-P01-6-06]難治性上室頻拍と左室拡張障害を来たしRYR2遺伝子異常を認めた心房中隔欠損症の一例

宮崎 悠夏, 関 満, 五味 遥, 森田 裕介, 古井 貞浩, 岡 健介, 松原 大輔, 横溝 亜希子, 佐藤 智幸, 村松 一洋, 田島 敏広 (自治医科大学附属病院 小児科)
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キーワード:

RYR2遺伝子異常、上室頻拍、心室中隔欠損症

【背景】難治性の不整脈を来たす症例では遺伝子異常が関与している場合がある。今回、難治の頻拍発作を繰り返し、病初期より心機能低下を示した心房中隔欠損症(ASD)症例を経験し、遺伝子異常を同定できたため報告する。【症例】生後10か月時に運動発達の遅れ(寝返りは可能だが座位は未獲得)、哺乳不良、体重増加不良のため、紹介受診。生後11か月時にRSV感染を契機に上室頻拍を発症し、精査目的で入院。CTR 65%、BNP 677pg/mLを示し、心エコーで二次孔型ASD、右心容量負荷所見、左室拡張能低下を認めた。プロプラノロールを導入したが、入眠時HR50台の徐脈が出現したため減量を要した。心臓カテーテル検査ではQp/Qs 2.6、mPAP 21mmHgであり、早期ASD閉鎖の方針としたが、待機中に上室頻拍が再発し、哺乳不良、BNP上昇 (1533pg/mL)を認めたため緊急入院。内科的治療により心不全は軽減したが、不整脈は消失しなかった。1歳3ヶ月時にASD閉鎖術を施行。術直後に難治性上室頻拍を繰り返し、抗不整脈徐脈治療にて高度徐脈をきたすためペースメーカー植込み術を要した。プロプラノロール、ピルシカイニドの併用で頻拍発作は消失し、心不全所見も改善した。全エクソームシーケンス解析によりRYR2遺伝子にヘテロの1アミノ酸欠失変異、ネマリンミオパチーの原因遺伝子とされるNEB遺伝子に複合ヘテロ変異を同定した。【まとめ】本症例はASDに伴う右心系容量負荷と頻脈性不整脈を呈し、左室拡張障害も認めた。RYR2遺伝子変異は様々な不整脈疾患が起こりうるとされ、心筋症との関連も指摘されている。また、稀ながらNEB遺伝子変異を有するネマリンミオパチー症例において心筋障害を呈した報告もあり、本症例の表現型には複合的な要因が関与した可能性が考えられた。