講演情報

[II-P02-1-01]川崎病冠動脈病変に対する冠動脈バイパス術の経験

城尾 邦彦, 安東 勇介, 牛島 智基, 恩塚 龍士, 木村 聡, 園田 拓道, 塩瀬 明 (九州大学病院 心臓血管外科)
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キーワード:

川崎病、川崎病冠動脈瘤、冠動脈バイパス術

【背景】冠動脈中枢部の川崎病冠動脈病変に対してはCABGが有効な治療法となりうる(JCS/JCSS 2020川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン).一方,動脈硬化性病変のない小児CABGにおいて,バイパス吻合および内胸動脈(ITA)グラフト採取の技術的難易度は高く,成人例に比較するとグラフト開存率は不良である.【目的】術中のグラフト開存評価に工夫を行った2症例を提示する.【症例】(症例1)20歳,55 kg,男性.4ヶ月時に川崎病へ罹患し,左右冠動脈瘤を形成.左冠動脈前下行枝近位部閉塞(LAD, seg6 100%)および右冠動脈閉塞(RCA, seg2 100%)に対し,on pump arrest CABG 2 : LITA-LAD, RITA-RCAを施行(LITA1.8 mm, RITA1.5 mm).術中にトランジットタイム血流計(TTFM)およびHEMS-ICG血管造影法によりグラフト開存の評価を行った.冠動脈CTにてグラフトの開存を確認し,術後13日目に自宅退院.(症例2)15歳,51 kg,男性.1歳時に川崎病へ罹患し左右冠動脈瘤を形成.LAD近位部閉塞(seg 6 100%)に対し,On pump arrest CABG 1 : LITA-LADを施行(LITA 1.3 mm).術中TTFMでのLITA流量が低値であり,予め挿入していた右大腿動脈圧ラインよりシースを挿入し,術中LITA造影を施行.バイパス吻合部は問題なくLITAの攣縮所見を認めた.LITAへニトロール0.5mlの動注を行い攣縮の改善を得た.術後はカルシウム拮抗薬内服を導入し,心筋虚血イベントなく経過.冠動脈CTにてグラフトの開存を確認し,術後20日目に自宅退院.【考察】動脈硬化性変化のないバイパス吻合においては,吻合部だけではなく攣縮による機能的狭窄も鑑別となる.術中評価としてITA造影は有用であり,全身ヘパリン化以前に動脈アクセスルートを確保しておくことが肝要である.生命予後が良好な疾患群であり,内胸動脈を用いた質の高いCABGを行うため,術中評価は極めて重要であった.