講演情報

[II-P02-1-02]部分肺静脈灌流異常を合併した右冠動脈肺動脈起始に対して外科的手術を施行した一例

石津 寛治1, 荒木 幹太1, 中村 香絵2, 佐々木 赳2, 藤野 光洋2, 川崎 有希2, 吉田 葉子2, 鈴木 嗣敏2, 杉山 央2, 鍵崎 康治1, 小澤 秀登1 (1.大阪市立総合医療センター 小児心臓血管外科, 2.大阪市立総合医療センター 小児循環器・不整脈内科)
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キーワード:

先天性冠動脈疾患、右冠動脈肺動脈起始症、部分肺静脈還流異常

[背景]右冠動脈肺動脈起始は、発症率が0.002%という非常に稀な先天性冠動脈疾患である。心室中隔欠損をはじめとした他の心疾患との合併率は23.8%に上るが、部分肺静脈還流異常の報告はない。今回、部分肺静脈還流異常を合併した右冠動脈肺動脈起始の症例に対して外科的治療を行ったため報告する。[症例]右冠動脈肺動脈起始、部分肺静脈還流異常(right upper PV to SVC)の2歳11か月女児。1カ月健診での心雑音を契機に、心臓エコー検査で右室心尖部にmosaic flowを認め多発冠動脈瘻が疑われていた。経過観察となっていたが、2歳3ヶ月時の心臓エコー検査により冠動脈拡大傾向(#1 Z score 4.17、#5 Z score 5.19)であり、当院に紹介となった。心臓エコー検査により右冠動脈の肺動脈への開口と逆行性血流を認め、造影CTで右冠動脈肺動脈起始の診断となった。加えて先天性心疾患として右上肺静脈が上大静脈へ還流する部分肺静脈還流異常も指摘された。診断時点での薬剤負荷心筋シンチグラフィによる明らかな心筋虚血を示唆する所見はなかったが、心電図では胸部誘導の広範なT波の陰転化を認め、突然死のリスクを鑑みて外科的治療の方針となった。手術は右冠動脈大動脈移植術、並びにdouble decker法での部分肺静脈還流異常修復術を施行した。右冠動脈は右冠尖のfacing sinusから起始しており、coronary buttonを採取しtrap door法で大動脈基部に直接吻合した。術後の心エコー検査、造影CT検査で右冠動脈が狭窄なく、右上肺静脈についてもスムーズに右心房へ還流していることを確認した。