講演情報

[II-P02-1-03]左側開胸アプローチによる左大動脈弓離断を選択した均等型重複大動脈弓・血管輪の乳児例

磯部 将1, 片山 雄三1, 田中 啓輔1, 藤井 毅郎1, 佐藤 光央2, 川村 悠太2, 川合 玲子2, 高月 晋一2, 日根 幸太郎3, 増本 健一3, 與田 仁志3 (1.東邦大学医療センター大森病院 心臓血管外科, 2.東邦大学医療センター大森病院 小児循環器科, 3.東邦大学医療センター大森病院 新生児科)
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キーワード:

重複大動脈弓、血管輪、アプローチ法

症例は4ヶ月男児、胎児診断症例。出生時より啼泣時の吸気性喘鳴を呈していたが、哺乳可能で体重増加が得られていた。徐々に覚醒時の気道症状が増悪し、哺乳量低下も認めたため、外科介入の方針となった。造影CTでは頸部分枝が左右対称に左右大動脈弓より分岐し、下行大動脈は椎体の右側を走行していた。気管および食道は椎体を横切る左大動脈弓に左後方から圧排され、血管輪を呈していた。食道造影では、左側からの圧迫による高度狭窄をみとめた。そのため、左側開胸アプローチによる左大動脈弓離断の方針とした。手術は左第3肋間開胸でアプローチし、左動脈管索を結紮・切離。左鎖骨下動脈、左大動脈弓を確保し、左大動脈弓が椎体を超えて下行大動脈に合流する部分まで十分に剥離を行った。左大動脈弓を下行大動脈合流部直前と左鎖骨下動脈分岐直後で遮断し、離断。断端はそれぞれ縫合閉鎖し、下行側の断端を椎体前面の壁側胸膜に縫合固定することで、前方の気管および食道への圧排を回避した。術後気道症状は改善し、造影CT及び食道造影では気管、食道の圧排は解除され、術後14日目に軽快退院。外来観察中に喘鳴は消失し、哺乳量の回復を認めた。重複大動脈弓は非常に稀な疾患であり、中でも左右の大動脈弓がほぼ同じ太さである均等型は約10%程度と稀少である。その外科介入には、症状の成因を正確に把握することに加え、下行大動脈の位置を考慮したアプローチ法の解剖学的検討が必要である。また補助循環の必要性を含め、至適な介入時期の判断に躊躇することがある。本症例では比較的早期の介入により、左側開胸アプローチから補助循環を使用せず、椎体の右側に位置する下行大動脈までの剥離・離断が比較的容易であった。術式や介入時期等について若干の文献的考察を踏まえて報告する。