講演情報
[II-P02-1-08]LV-RA短絡を合併した膜性中隔瘤に対する解剖学的VSDパッチ閉鎖および三尖弁形成の手術成績
○水本 雅弘1, 落合 智徳1, 内田 徹郎1, 鈴木 康太2, 藤井 隆2, 松木 惇2, 粟野 裕樹2 (1.山形大学医学部外科学第二講座, 2.山形大学医学部小児科学講座)
キーワード:
心室中隔欠損症、膜性中隔瘤、LV-RA短絡
【背景・目的】膜性中隔瘤(MSA)を合併したVSDでは、三尖弁変形よる三尖弁閉鎖不全症(TR)や感染性心内膜炎、血栓形成・塞栓、右室流出路狭窄などの合併リスクがある。なかでもLV-RA短絡まで進行した場合はLV容量負荷だけでなく、中隔尖の変形肥厚が著しく手術においては工夫を要する。今回われわれは、MSAを切除し、解剖学的VSDパッチ閉鎖および三尖弁形成術を行い成長に伴う三尖弁機能を温存する術式を行ってきたためその手術成績を検討した。【対象】2020年10月~2025年2月まで当院における先天性心疾患手術は81例で、VSD手術は44例であった。その内、LV-RA短絡を合併したMSA症例7例を対象とした。月齢70(14-84)ヶ月、男:女=2:5、体重18.3(7.6-21.5)kg。肺体血流比1.7(1.5-2.1)であり、1例のみ三尖弁変形高度により手術適応と判断した。VSD局在は膜様部inlet1例、trabecular4例、outlet2例。VSD開口size3.0(3.0-5.0)mmに対してoriginal VSD size10(10-10)mmであった。【術式】MSAを切除することで心室中隔に癒合した三尖弁中隔尖の可動性を改善させる(可及的に腱索温存)。VSD運針は結節法でMSA一部を利用することで伝導障害を回避し、0.4mm ePTFE patchを使用した。三尖弁前中交連の弁接合不良部分をedge to edge repairを基本とする弁形成を行った。【結果】在院死亡なし。主要合併症なし。手術280(266-285)分、人工心肺125(114-143)分、大動脈遮断73(63-82)分。無輸血4例。挿管18(3-19)hours、ICU滞在2.0(1.0-2.0)日、術後在院9.0(9.0-11.0)日であった。退院前心エコーではVSD遺残短絡は全例認めず、TR none1例、trivial3例、mild3例であった。術後6ヶ月ではTR none1例、trivial6例に改善していた。【結語】当院におけるLV-RA短絡を合併したMSAに対する解剖学的VSDパッチ閉鎖および三尖弁形成の早期成績は概ね良好であった。より長期のフォローが必要である。