講演情報

[II-P02-2-05]小児と成人の肺動脈性肺高血圧症におけるトレプロスチニル吸入による有効性と安全性の違い

高月 晋一, 清水 由律香, 佐藤 光央, 川村 悠太, 川合 玲子 (東邦大学医療センター大森病院 小児科)
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キーワード:

トレプロスト、吸入療法、肺高血圧

<背景> 肺動脈性肺高血圧症(PAH)の成人患者におけるトレプロスト吸入療法は運動耐容能や肺循環動態を改善させるが、小児患者おける有効性や安全性の報告は少ない。また小児のPAHは成人よりも肺血管攣縮の関与が大きく、トレプロスト吸入療法への反応性や副反応は成人とは異なる可能性が考えられる。<目的> 小児および成人PAHにおけるトレプロスト吸入療法の有効性と安全性の違いを検討した。<方法> 特発性及び遺伝性PAHの9例を対象とし、小児4例と成人5例に分けて評価を行った(年齢中央値:小児11歳、成人30歳)。1回3吸入の単回吸入前後の肺循環動態、吸入の有無による6分間歩行検査の歩行距離や心拍数、最低酸素飽和度の変化、継続投与における副作用について、2群に分け比較比較した。<結果> 9症例全体、小児例、成人例のいずれの群でも、吸入前後で平均肺動脈圧、肺動脈圧/大動脈圧比、肺血管抵抗、1回心拍出量は改善傾向を示したが、統計学的有意差はなかった。しかし、平均肺動脈圧と肺動脈圧/大動脈圧比の変化率においては、小児では有意に改善したが、成人では有意差は認めなかった(平均肺動脈圧(中央値) 小児 35mmHg vs 27mmHg、p=0.01、成人 49mmHg vs 47mmHg、p=0.80、肺動脈圧/大動脈圧比(中央値) 小児 0.48 vs 0.34、p=0.006、成人 0.80 vs 0.68、p=0.62)。6分間歩行検査における歩行距離、最高心拍数、最低酸素飽和度は、2群とも有意差は認めなかった。副作用は咳嗽が5例(小児2例、成人3例)、嘔気が1例(小児のみ)であり、小児と成人ともに副作用による治療中断例はなく、全例で継続が可能であった。<結論>小児PAHにおけるトレプロスチニル吸入療法は、肺循環動態への急性効果を示し、成人と同様に安全性が高く服薬コンプライアンスは良好であった。