講演情報

[II-P02-2-06]ACHD-PAH3症例に対するトレプロスチニル吸入の導入 ~ACHDの病態に合う肺高血圧治療

岩朝 徹1, 坪谷 尚季1, 村山 友梨1, 坂口 平馬1, 大内 秀雄1,2, 土井 拓3, 神谷 千津子4, 吉松 淳4, 黒嵜 健一1 (1.国立循環器病研究センター 小児循環器内科, 2.国立循環器病研究センター 成人先天性心疾患センター, 3.天理よろづ相談所病院 先天性心疾患センター, 4.国立循環器病研究センター 産婦人科)
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キーワード:

肺高血圧、成人先天性心疾患、トレプロスチニル

【緒言】トレプロスチニル吸入療法(iTre)は一昨年春に日本でも認可された、本邦では現在最も新しい肺動脈性肺高血圧治療薬である。成人先天性心疾患患者(ACHD-PAH)への使用報告は乏しいが、当科で3名に対し導入した状況について報告し考察する。【症例1】iTre導入時41歳女性。VSD術後残存するPAHで治療中、不妊治療で妊娠。出産及びその後の治療目的で導入し、PAP 61/27(42)mmHg、PVRI 16.8WU・m2から45/15(29)mmHg、 7.88WU・m2まで改善した。内服肺血管拡張薬で低酸素血症が出現したが、iTreではむしろ改善した。産婦人科病棟での導入となったが、導入に際しては一時的な頭痛の出現のみで支障せず。【症例2】29歳女性、ダウン症PDA術後PAH。イロプロスト1日7回吸入からの切り替え。特に支障せず導入可能であり、血行動態の変化もなかった。【症例3】45歳女性、AVSD術後Eisenmenger症候群。他のセレキシパグが副作用で導入困難であり、代替治療として導入。導入時咳き込みや頑固な頭痛が出現したが1回6吸入まで導入に成功した。【考察】iTreは他の薬剤でも支障があるような患者であっても、比較的導入が容易であった。当科のACHD-PAHでは呼吸機能や換気血流のバランスに問題を抱えている例が多く、他剤では出る副作用がでづらい本剤は病態にあった薬剤であろうと思われた。【結語】ACHD-PAH3例にiTreを導入し、大きな支障はなかった。換気血流不均衡や呼吸機能に異常をもつACHD-PAHでは病態を悪化させない一つの治療選択肢と考えられる。