講演情報
[II-P02-2-08]一酸化窒素吸入負荷心エコー検査にもとづいて投薬内容を決定した特発性肺動脈性肺高血圧症の3歳男児例
○本間 友佳子, 早渕 康信 (徳島大学病院 小児科)
キーワード:
負荷心エコー、一酸化窒素吸入、特発性肺動脈性肺高血圧
【背景】2022 ESC/ERSガイドラインにおいて、急性肺血管反応陽性の特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)には高用量のカルシウム拮抗剤の投与が推奨されているが投与量の詳細な定義はない。我々はカルシウム拮抗剤や肺血管拡張薬の投与下においても急性肺血管反応が陽性であればカルシウム拮抗剤の追加効果があると考え、副作用に留意しながら効果が得られる必要充分量を投与することを試みた。心臓カテーテル検査は侵襲的で繰り返し評価することが困難であるため、心エコー検査による急性肺血管反応試験を施行した。【症例】3歳男児。意識消失、息切れ、胸痛より肺高血圧症を疑われ当院に紹介され、IPAH と診断した。カテーテル検査時に施行した一酸化窒素(NO)吸入を用いた急性肺血管反応試験は陽性で、肺血管拡張剤とカルシウム拮抗剤で加療した。カテーテル検査前後にNO吸入負荷心エコー検査を繰り返し施行しながら治療計画を立てた。心エコーでTRはごく少量で三尖弁逆流圧較差は計測困難であったため、肺動脈血流の加速血流時間と駆出時間の比や収縮期の左室短軸像での左室径の縦横比である Eccentricity index を評価に用いた。NO吸入負荷による急性肺血管反応試験の判定には左室径変化、Eccentricity index が有用であった。左室径、Eccentricity indexは初回の検査時が最も改善度が高く、徐々に度合いは減少した。効果がないところまでカルシウム拮抗剤を増加し、繰り返し検査で評価した。心エコーで陽性が得られる間はカルシウム拮抗剤の追加が有効である可能性があると考えて加療し、治療効果が得られた。【考察・結語】左室拡張末期径、左室収縮末期径、Eccentricity index はカルシウム拮抗剤の増量に従って改善し、カルシウム拮抗剤・NO負荷による肺血管抵抗・肺動脈圧の低下、肺血流量増加などが改善に直接影響を与えていると考えた。NO吸入負荷心エコー検査は肺高血圧症の治療方針決定に有用と考えられた。