講演情報
[II-P02-3-06]当院におけるがん治療後の心機能フォローアップについて
○久保 慎吾, 田中 敏克, 渡邉 望, 伊藤 啓太, 稲瀬 広樹, 飯田 智恵, 中井 亮佑, 三木 康暢, 亀井 直哉, 小川 禎治, 城戸 佐知子 (兵庫県立こども病院 循環器内科)
キーワード:
がん治療関連心筋障害、CTRCD、GLS
【背景】アントラサイクリン系抗がん剤をはじめとする心毒性を持つ薬によるがん治療関連心筋障害(CTRCD)は予後に影響を及ぼしうる循環器合併症であり早期発見・介入が望ましいが、重症化してから小児循環器科医が介入することが少なくなくフォローアップが不十分の可能性がある。【目的】当院でのがん治療後の心機能フォローアップの実態を把握すること。【方法】2020年1月から2024年12月までにドキソルビシンを使用した患者(96名)のうち1年以内の死亡(5名)、転院(9名)、治療中(8名)を除く74名について、治療後の心機能フォローアップについて後方視的に検討した。【結果】患者背景は男性41名、年齢 1歳5ヶ月から21歳10ヶ月(中央値 10歳6ヶ月)、血液腫瘍が53名で、約2割の患者で治療後の心機能評価が行われていなかった。ドキソルビシン累積投与量は50-450mg/m2 (中央値120)、17名で250mg/m2を超えていた。CTRCDと診断して治療介入したのは3名で全例投薬開始から1年以内の発症だった。うち2名は重症心不全のため集中治療を要し、1名はGLS(Global Longitudinal Strain)の有意な低下より潜在性左室心筋障害と判断し治療している。4名は一過性のLVEF低下、NT-proBNP軽度上昇などで要観察としている。【考察】心毒性リスクを配慮すべき累積投与量に達していても心機能フォローアップができていなかった症例がいた。当院でもPHILIPS社のAutoStrain LVを導入して簡便にGLSを評価できるようになっているがまだ十分浸透していない。GLSはLVEFより早期に心機能異常を捉えられる可能性があり、LVEF、心筋バイオマーカーに加えてGLSもモニタリングできるよう体制を整えていく必要がある。【結論】小児循環器科医は小児血液腫瘍内科医と連携してCTRCDの早期発見・介入に努めることが望ましい。